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Re □ 運命の ページ6

一度目の朝はポケットにハンカチーフ以外は入れていなかったと思う。
手を入れて触ってみると、金属然とした冷たい感覚が指先から伝わった。恐る恐る取り出せば、握れはしないが、手に収まる程度の懐中時計らしき物体だった。
銀かアルミニウムか、金属の種類は分からない。ただ銀色の円盤の表面には、どこかの由緒正しい家の紋章にも、何かを召喚する魔法陣にも見えるレリーフが細かく彫ってあった。
下の凹凸を触るとカチリとハマったような音がして、レリーフの蓋が開いた。それはやはり懐中時計だったようで、黒い二つの秒針が同じ間隔で時を刻んでいた。中の数字が描いてある白い円盤にも小さなレリーフが掘ってあった。
「わ…骨董品かな、綺麗だな…」
窓から差し込む光に当てると、キラキラと反射して時計は輝いた。

これが時間が狂った原因かもしれないと思うと、美しいがなんだか得体の知れない物だ。
でも、僕がどうにもできないものだからと言って先生達に渡すのも見せるのも憚られた。この自分の心の作用は深くは分からなかった。理由も分からなかったけど、何故かとても嫌だった。



そのまま右ポケットにヴィンテージと思しき謎の時計を入れたまま、授業を歴史、錬金術と2時間受け、運命の移動教室の時間がやってきた。

4階にあって大きな湖を見下ろすことが可能な、石で出来た廊下。柱が連なっており、ひっくい石の柵がその間にずっと続いている。
僕はここから転落して命も落命する所だったのだが、『なんか出ろぉー!』に呼応したマジカルペンが急に輝き、なぜか朝まで時間が戻っていた。悲しいが、恐らく夢じゃなく、事実。

今度は角の方ではなく柱に近い方を歩きながら懐中時計を取り出す。その時の僕は周りの人々の話に耳を澄まそうという考えはもうすっかり無かった。
右手で時計をギュッと握る。一つ目のドア、二つ目のドア、そして三つ目のドアを越したところに例の角道がある。
周りからは何も変化は感じ取れないと思うが、歩を進めるごとに自分の緊張が徐々に高まり、心臓が痛いほど膨張して収縮するのを感じていた。

逸る気持ちに知らんぷりを決めてコツコツと歩いていく。一度目の時と同じならば、あの角からフロイド・リーチが出てくるはずだ。
そして三つ目のドアの向こうをサングラス越しに横目で見ると、頭一つ飛び抜けた長身。
やはり彼は機嫌が悪そうに歩いていた。

緊張が最高潮に達し、心臓が何回も暴発する。
僕は気にも留めない様子を必死で装った。

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サジャ(プロフ) - 毎回楽しみに見ています!作者様のペースでこれからも更新頑張ってください!毎回見ていてとても楽しいです! (2022年2月15日 0時) (レス) @page24 id: a6f9474135 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふねぬい | 作成日時:2022年2月6日 22時

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