【男主】トモダチ【ツイステ】 (ページ5)

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僕は目を覚ました。

寝ぼけたひとみを擦ってベットからのっそりと起き上がる。
臙脂色のカーテンを開けるとステンドグラス越しに朝の眩しい光が差し込んだ。まるで学園の動く絵画のような太陽の輝きは雲間から光のベールを発し、天使でも降りてきそうな美しさだ。
強い光に思わず目元に手で廂をつくった。
鳥は鳴き、空は青く、空気も澄んでいた。
今日も変わらない、素晴らしい日だ。
陽の光を浴びて目が覚めてきた僕は後ろに振り向いた。不運なことに、当然そこには誰もいない。

「ん…？」
目の前の景色と何かが重なり合い、デジャヴのようなものを感じた。ステンドグラスに寄りかかり、頭に手を置いて記憶の断片を手繰り寄せる。そして植木鉢の葉から朝露が落ちるその一瞬で全てを思い出した。

焦るな、焦るな。確率は雀の涙だが、もしかしたら誰かが看病して僕の部屋まで送ってくれたのかもしれない。
サイドテーブルに置いてある携帯をぐわしと掴み、日付を確認する。そこには一週間遅れて入学してから一月たった数字が表示されていた。
時間が…朝に戻ってる。
「え？！！」
一人部屋だから大声出しても誰も叱る人はいない。あまりの脈略のない出来事に僕はバネ仕掛けの人形のように飛び上がった。ボフンとベットが問題なく受け止めてくれ、そのままシーツの上で小さく蹲った。
…イヤ、夢だったのかも。ウン。夢だよ…。時間が戻るなんて、そんなことあるはずない。僕がそんな高等な魔法使える訳無いし。
「でも夢っていうにはちょっとリアル過ぎた気も…」
すぐ側の壁にかけてあるジャケットの胸ポケットに入ったマジカルペンをまじまじと見るが、ブロットは溜まっていなかった。時を戻す魔法なんて使った日にはそりゃもう、ラーメンの上の黒マー油みたいなのか大量のインクみたいなのが渦巻いてるんだろう。

…とりあえず身支度しよう。
頭はこんがらがっているが、毎朝のルーティーンは完全に体に叩き込まれているらしかった。
さっさとパジャマを脱いでシャツを着終える。丸い鏡の前で適当に顔に化粧水を何回かふりかけた。顔をぺちぺち叩いていると、前より一層不安そうな瞳をした自分と目が合う。いつもならムッとしたかもしれないが、今は疑問やら焦りやらが心から湧いては消えて、それどころではなかった。
直ちにお気に入りのレトロなサングラスをかける。

壁から制服を手に取り羽織ると、ごつごつした、それもある程度の重量のある何かが右ポケットの中に入っている感触がした。