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魅了□距離 ページ23

隣を歩く男を見上げるが、今彼が何を考えているかやはり知りたくなった。
最近ずっとこうだ。フロイドの妙な魔力というのか、それとも彼が人を惑わす人魚だからなのか、僕と彼が友達だからか、は分からない。
でも、彼を知りたい。彼と話したい。
僕の脳髄には、目の前にはいないはずのフロイドが胡座を組んで居座り、時折こちらに手を振った。その度自分が何かしていてもわざわざ動く手を止めて向き合うのが常だった。
こういうのを心ここにあらず。と言うんだろう。

うん。前言撤回。
フロイドと僕の関係が変わったのではなく、僕のフロイドへの立ち位置や視点や見方、認識が変わっただけだ。

僕は彼をとても大事な一人の友達だと心から思う。直接言うと無駄にイジってくるし、付け上がるから言わないけれど。
幸せな足取りと共に、僕はよろめいた。



「…うま…!」
想像を超えるスイーツのバランスの良さに、"味の宝石箱や〜"と言いたくなった。けれど、照明を反射してつやつやと光る果物達の断面はまさにジュエリー。
なら僕は大富豪だ…。と酔いしれながら至福の時を過ごす。
苺やら蜜柑やらメロン等の旬の果物が使われたパフェを柄の長いスプーンで掘り進める。半分まで食べた頃に自分が写真を撮り忘れたことに気がついた。いつも食べる前の習慣だったのにな。
驚きで瞳をパチパチさせていると、ドアが開いた向こうからフロイドがやってきた。
目線だけ送っても背が高すぎて顔までは見えない。
コト、と音を立てて新たな食べ物が追加される。一見小さく見えるパンナコッタだったが、違う。フロイドの手が大きいだけだ。
「はい、ど〜ぞ♡」
ウワとだけ漏らすとひっでぇ!と泣くふりをしながら隣に座ってくる。身長に比例してそこそこ重い彼が脱力しながらソファーへと沈めば、衝撃がお尻に伝わってきた。
長い下半身を投げ出してだるそうに足を組む姿はまるでギャング。元イソギンチャク達は見ただけで震え上がりそう。

「お疲れ様」
いきなりの仕事が舞い込み、試作品を食べるのは結局バイト終わりになってしまった。ソファーからずるずると下がっていく彼の顔に被せられたハットを取る。
顔をのぞき込むが、彼にしては珍しく結構疲れているようだ。
無言で僕の顔を数秒見つめた後、ぬるんと手がこちらに伸びてきて、サッと避けようとしたが、うまく逃げきれなかった。腰に腕が絡む。お前は特大ダッコちゃんか。
そう呟くと、ダッコちゃんってナニ。とだけ返ってきた。

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サジャ(プロフ) - 毎回楽しみに見ています!作者様のペースでこれからも更新頑張ってください!毎回見ていてとても楽しいです! (2022年2月15日 0時) (レス) @page24 id: a6f9474135 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふねぬい | 作成日時:2022年2月6日 22時

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