香辛料 ページ21
そろそろ通りかかる頃だ。そう思いながらノートをまとめる手を止めて右を見た。
「あ〜っやっほ〜!」
語尾に"☆"か"♪"がつきそうなぐらい好調子のフロイドが鼓膜が破れんほどの大声と共にこちらにブンブン手を振った。しかし体操着の彼は中庭におり、僕は校舎二階の教室にいたから軽く手を振ったのみだったが。よくここに僕がいるって毎回気づくな。
「以前から思っていたけれど、君達は本当に仲睦まじいね」
窓の向こうを見ていた背中に、高貴でどこかぴしぴしとした雰囲気の声がかけられる。
緩徐に振り向くと予想内の声の主、フロイド曰くからかいがいのある"金魚ちゃん"ことリドル・ローズハート君が居た。
一年生で寮長になった凄い人。しかも、自分自身の実力でテスト一位の猛者だ。いかにも、ユニーク魔法で死ぬ程不正をして僕が同率一位を取っていることを知ったら真っ赤になって怒りそうだ。
彼の顔を観察すると嫌味や揶揄ではなく、純粋に思ってそれをそのまま口にしている。だから僕も素直に答える。
「そうだな。"友達"だからな」
グッと胸を気持ち誇らしげに張ってみる。こんな風に装っていても内心めちゃくちゃに嬉しい。だって唯一無二の友達。
学園じゃあまり表情の変えない僕の心底喜ばしい気持ちが態度滲み出ていたのか、リドルは少し物珍しそうな顔をしたが、すぐに微笑んだ。
彼は普通の時は本当に穏やかで規則を破らない限りは怒らない、根が優しい人物だ。ただ自分自身の正義に真っ直ぐすぎるだけで。
僕は今日のこのやり取りを三回もやっている訳だが、こういう日常のほんわか系なら何回繰り返してもOK。だけど、そろそろ少量のスパイスが欲しくなってくる。
「でも、"金魚ちゃん"はフロイドのこと、嫌いなんだろ?」
どこかあだ名も揶揄うように聞いてみると、リドルは少しムッとしたようだった。
「別にフロイドのことは嫌いじゃない。ただ彼があまりにも無遠慮だから目に余るだけさ。それに、あだ名については君も"ルブラ"と彼に呼ばれているだろう」
僕は確かに髪が赤いけど君には赤い要素は見当たらないけど。
先程より少し不機嫌で厳しめになった声に少し苦笑いをするが、指摘されてそういえば相手から僕の瞳が見えていないことに得心した。
サッとサングラスのツルを持ち上げ、自分の真っ赤な瞳を指さし気取ってウィンクする。
「どう、ルブラと呼ばれるのに結構ふさわしい?」
リドルは不意をつかれ一驚を喫したらしく、形の良い目は大きく開かれた。
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サジャ(プロフ) - 毎回楽しみに見ています!作者様のペースでこれからも更新頑張ってください!毎回見ていてとても楽しいです! (2022年2月15日 0時) (レス) @page24 id: a6f9474135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふねぬい | 作成日時:2022年2月6日 22時