天使 ページ20
とりあえず、クマのごつい天使は一旦端に置いておいて、僕は逸って全く落ち着かなくなってしまった心臓を何とか抑えて、フロイドを東奔西走探していた。
早く、早く聞きたかった。知りたかった。僕が彼のなんなのか、彼が僕をどう思っているか。この悲しいほど、くすぐったくて柔らかい気持ちを。
そうして2階を走っているうちに、漸く校舎の外れの1階の方にフロイドを見つけた。
「フロイドーーーーッ!!!!」
僕はいつもの躊躇は、臆病故の思慮深さはどこに行ったんだ。と自分でも思うほど一切の尻込みをせず2階から飛び降りた。
フロイドは降ってきた僕に気づき、結構質量のあるものが落ちてきたのにも関わらず、抜群の身体能力とタッパでしっかりと受け止めた。しかし衝撃でサングラスは吹っ飛ぶ。
無駄にでかいウツボは驚いたのか、目を見開いている。こういった顔は始めて見る類のものだった。
なんだかしてやったり!と優越感が沸き起こり僕は自分の頬があったかくなるのを感じた。
なんだかほわほわして無意識に笑顔が浮かび上がり、自分の厚い嘘コーティングが少しめくれて、本当の部分が外気に晒された気がした。フロイドの肩に手を起きながら、目をしっかり合わせて聞く。
「ねぇ、僕達って友達かな?」
多分今の自分は自分が思っている以上にニコニコしているだろう。そう自覚しながらも笑顔はやめられなかった。
「…」
「お、おいフロイド。何とか言えーーー…ぐぇっ」
潰れた蛙のような声が出てしまったが仕方ない。なぜならフロイドにぎゅっと抱きしめられていたから。いや、絞められてる?
「ちょ、苦しい…」
受け止めてもらった状態のまま抱きつかれたからか、普通に足が地面に着いていない。彼の表情も見えない。広い背中をバンバン叩いて離そうとしてもらうと、フロイドはいきなり僕の脇下を掴んで腕を伸ばした。さながらライオンキングのシンバが持ち上げられているシーンみたいだ。
彼の目を改めて見つめると瞳は細められ、嬉しそうにキラキラと輝いていた。綺麗だ。
「ルブラちゃん!アハッ!!アハハハッ!!!」
「わっ!急になんだよ!!」
そのままフロイドを軸としてクルクルとその場でぶん回され、急な遠心力にだんだん血液が脳みそから足の方へと集中していく、そして徐々に頭や視界もぐるぐる歪み出して…。
「あのね、ルブラちゃん、オレさ…ってアレ…」
フロイドはいつもの威勢を失い、両手を口に当てる青年を見つめた。
「フロイド…きぼちわるい…」
□
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サジャ(プロフ) - 毎回楽しみに見ています!作者様のペースでこれからも更新頑張ってください!毎回見ていてとても楽しいです! (2022年2月15日 0時) (レス) @page24 id: a6f9474135 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふねぬい | 作成日時:2022年2月6日 22時