侵略者 ページ18
思い切り伸びをしていると、ドンドンドン!と破裂音の様な音がドアから聞こえた。
最初は銃声音に聞こえ、何が起こったのかと思ったのだが、これはノック音。
ドアを壊されても堪らないのでさっさと鍵を開けた。
「やっほ〜!ルブラちゃん」
ドアの向こう側にはいやにニコニコしたフロイド・リーチ。話題の主の登場だ。でかい体越しに廊下にいた寮生がそそくさと自室に消えていくのが見えた。そして下に視線を移すと、何やらデカいトランクを持っているではないか。
「お帰りください」
そう言って再びドアを閉めようとするが、即座にガッと挟まれる無駄に長い足。
「ちょっとー!オレ来たばかりなんだからさぁ、閉めないでよ!ケチ!」
「だから!来るなら事前に連絡しろっていつも言ってんだろ!何度も言わせんな!」
ギャーギャーと攻防戦を繰り返すが、フロイドの方が可愛い顔して僕よりうんと力が強い。しかも、僕のユニーク魔法のことについてチラつかせてくる。普通に勝てない。
僕はそれをされる度グッと眉根を寄せ、無言でドアを開けるのが常だ。その言葉を魔法の言葉とも思っているのだろうか。思っているんだろうな。そして今日も僕は彼を部屋に入れた。
「結局部屋に入れるならさぁ。ピーピー言わずにさっさと入れろよ」
そう言いながら当然の権利のようにでろーん。と我が物顔でベットに居座るフロイドに冷たい目線を向ける。
「そういう!問題じゃない!」
目を吊り上げて怒っても彼は知らん振りでトランクの中に詰まった諸々のものを荷解きしていた。あぁ、また私物が増えていく…。
呆れながら彼を見つめるが、どんなに押したってフロイドが動かないのはわかってる。ふぅ。と鼻からガス抜きのように息を吐き、自分のベットに座り直した。
彼の上機嫌さから、片割れと喧嘩して部屋を飛び出して来た訳では無いということは様子を見て分かった。分かったけど、僕はわざわざ理由を聞きたかった。
「今日は、何?またジェイドと喧嘩でもしたのか?」
「んーん。オレが来たいから来ただけ」
"じゃあ帰れ。"そう突き放したくなったが、わざと聞いたから突き放せなかった。だから僕は答えがすぐ出せず、口を2、3回モニョモニョしただけだった。
フロイドがサラッと欲しい言葉をくれたがために、内心気恥しいような嬉しいような。なんだ、この気持ちは。
最近フロイドと話しているとこういった気持ちになることが多かった。心とは不可解だ。実に神妙だ。
僕は見えない振りをした。
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サジャ(プロフ) - 毎回楽しみに見ています!作者様のペースでこれからも更新頑張ってください!毎回見ていてとても楽しいです! (2022年2月15日 0時) (レス) @page24 id: a6f9474135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふねぬい | 作成日時:2022年2月6日 22時