6個目の嘘 ページ7
「君、この後空いてたりする?」
すっかり酔いがまわったのか、若干舌っ足らずな口ぶりで話しかけてくる男を前に、私は余裕の表情で答えた
『勿論。…あら、もしかしてこれはお誘いだったりするのかしら?』
彼がどういうつもりなのか知っているのに知らないふりをして嘘を重ねる。
『今夜は何も予定はないの。』
「それは良かった。…良ければ君とふたりで飲みたいんだけど、どうだい?」
『勿論。…じゃあ、そろそろ店を出ましょうか』
ここまでは順調にことが進んでいる
あとは、この異能を使うだけ。
「いやぁ、今日は珍しく飲みすぎた…。君がいたからかな?」
私の1歩前を歩き、
冗談めかして笑うミゲル
『(………これなら…)』
確実に彼を落とせる。
確信に至った私は、彼の服の袖を控えめに引っ張った
「…うん?」
彼がこちらを振り向いたタイミングでその体に腕を回した
『…ねぇ、私…』
「…………」
ごくり、と彼の喉が鳴る。
上目遣いで彼を見れば、もう彼は私から目が離せない
そうしたらあとは数えるだけ。
彼の腕が私の背中に回ろうとしている
1…
2……
3………
ぼうっと私の瞳が熱くなるのを感じた。
異能が発動する条件が整った合図だ
「っ、!?」
『異能力 サロメの恋煩い』
彼は一瞬目を大きく見開いて、その翠色の瞳いっぱいに私を映した
次に瞬きをした彼は、その翠の瞳に光を宿さず、
あれだけ軽く弾んでいた言葉も無く
ただ私の言葉のみを聞く人形へと成り下がっていた。
『…私、あなたにお願いしたいことがあるの』
『あなたが所属している組織。私、そこが嫌いなの』
『潰して』
そう"お願い"すれば、彼は私を優しく抱きしめた
そして優しく微笑んで、感情のない声で私に言った
「…ああ、勿論。愛しい君のためなら。」
これが私の異能
心を縛る、私の異能。
『―――――何度使っても、惨めな異能。』
後に残るのは
虚無感と、
愛を渇望する、空白に埋め尽くされた心。
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ミィ - (´;ω;ノノ゙パチパチ (2021年5月18日 2時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミーヤ | 作成日時:2019年6月20日 22時