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29個目の嘘 ページ30

少年と話していた船は、どうやら「ぽーらんど」という国に向かっていくらしい
どういう国なのかわからないし、はぐれないように慎重に行動するようにしないと

…それよりも、今は先ずあの子と合流する必要がある




船の積荷に紛れて箱の影にいる私は、計画していた通りに
あの少年が見張りの気を逸している隙に船の中へと潜り込んだ
「潜り込んだら下へ」、彼はそう言った

船に入り、階段を見つけ、迷わず下へと駆け抜けた私の目の前にあったのは積荷が運ばれる部屋だった。



『…下へ来たけど、何時、来るのかな』




船は出航していないけれど、此処に来てだいぶ時間が経っている
服のポケットにしまっていた、古くて、錆びたボロボロの懐中時計を出して時間を確認する

……少なくとも、20分は経っているようで、少々心配になってきた




『待ってろって言われたけど』

『もし、あの子に何かあったとしたら?』




考えたら怖くて、身体が先に行動していた
荷物室のドアに耳を付けて音を確認する

ギィ、ギィ、と波に揺られて船が軋む音、…それ以外の音は聴こえない



そっとドアをあけて、早歩きに階段を目指す
突き当たりの階段を覗き込んで、人がいないことを確認して、恐る恐る船の1階へと戻る




『騒ぎには…なってない…?』



もし彼が見つかっていたとしたら騒ぎになっているだろうし、
まだ上手く隠れているのかもしれない

だとしたら、私も大人しく荷物室に戻ろう



後ろを振り向いて、来た道を戻り、
足早に階段を降りようとしたその時、
ゆらり、ゆぅらり
先ほどよりも足元が揺れ始める

どうやら出航したようだ



荷物室に暫く人の出入りは無いだろうが、目的地に着いたら絶対に見つかってしまう

それまでにどうにかあの少年と合流しないと不味い




『待ってろって言ってたってことは、来てくれるよね…』




来てくれなかったら、私は多分、此処で終わり
でも彼は"私が嫌と言っても一緒にいてくれる"って、そう言ってくれたから

元の木箱の荷物裏に戻り、膝を抱えて背中を壁に預ける
ゆらゆらと揺れる船に、波の音、眠くなってしまう

うとうとと眠ってしまいそうになった時に、ギィ、と荷物室のドアが開いた



ハッとして、すぐに逃げられるように立膝をついた
眠気なんて消えて、冷や汗が額から頬を伝う

誰?怖い
此方へと来る足音に、怖くて目をギュッと閉じると、
数秒後、頭上から小さく私を呼ぶ声がした




「…此処にいたんですね、Aさん」

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ミィ - (´;ω;ノノ゙パチパチ (2021年5月18日 2時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミーヤ | 作成日時:2019年6月20日 22時

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