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24個目の嘘 ページ25

『…ところで、何時までその姿勢でいるつもり?』




「いつまででも」




『ええ………』





いつまででもって…、餌付けに意地になりすぎじゃない…?
いや、それを言ったら私も意地になっているのだろうけど

…その、正直羞恥が一番の理由で、
ほら、彼顔は良いじゃない。悔しいけど。





「…そろそろ本格的に腕の感覚が無くなってきました」






腕を下ろせばいいじゃない…!!!
なんなのよ、莫迦なの?!
自分の腕を見て冷静な顔でそう言われたら…嗚呼もう!






『わかった!わかったわよ!食べればいいんでしょう?!』





「おや、漸く素直になりましたか」





『もうあなた黙って頂戴』






思い切って、魔人が差し出すイチゴにかぶりついた
…あ、甘い。
酸味が少ないイチゴの優しい甘みが、舌から脳へと幸せを伝達する





「やはり、イチゴお好きなんですね」

「ここに来て一番顔が緩んでいますよ」





『ちょっ…とそんなに見ないでくれる!?』





「おや、これは失礼」

「あまりにも幸せそうで、つい」





だからといってレディーの緩んだ表情をじっと見詰めるのは失礼なんじゃないのかしら



気を取り直して軽く咳払いをする
口元を拭いて紅茶を口にすると、アプリコットの良い香り。

…ちょっと、魔人相手に隙を見せすぎた


私としたことが、イチゴごときであんな…
でも美味しかったのだから仕方ない





ちらりと魔人を見れば、彼もまた普段より雰囲気が柔らかいような…?
口元は柔く笑んでいるし、目元も何処か優しげで……








『…?』



「どうしました?ぼくの顔をじっと見て」



『……いいえ』







胸に何か突っかかったような
ほんの一瞬だけ、そんな違和感があった

何処か、既視感があるように思えたのだけれど、
…気の所為?



今まで出会った人の中に彼に似た人なんていただろうか。



なんだかモヤモヤする
なんで私、ここまで気にしているの?






「そんなに見られると恥ずかしいです」



『恥ずかしがっている顔には見えないけれど』



「見えることだけが事実ではないですよ」





『…そう言って、あなたも随分私をじっと見ていたじゃない』




「貴女は見ていて飽きないので」





『そう言われると見ないでほしくなるわ』

『あっちを見て頂戴』





「ぼくも、そう言われるとずっと見ていたくなります」



『やめて』







そう言ってじとっとした目線で見れば、
魔人は楽しそうな表情で目を細めた

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ミィ - (´;ω;ノノ゙パチパチ (2021年5月18日 2時) (レス) id: d748bf27c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミーヤ | 作成日時:2019年6月20日 22時

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