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……その日、僕は夢を見た。
『リリカちゃん達、トイレ行っちゃったねー』
「…………そうだな」
『……』
「あの、さ。A」
『なーに、13』
「俺、ずっと前から、Aのことが……」
13がこれから口にすることが、容易に想像出来る。……止めなくては。そう思うのに、体が動かなくて…………
「……A、好きだ。俺と付き合ってほしい」
『…………!』
どうか断ってくれと、動けないまま僕は願う。
Aが口を開く。声は聞こえなかった。意識が遠のいていく。歪んでいく僕の視界に一瞬だけ映った彼女の表情は……
…………あの、花が綻ぶような笑顔だった。
───
──
─
「……っ! ……はあっ、はあ…………」
僕はベッドから勢いよく上体を起こす。寝汗をかいた所為か、パジャマが肌に張り付いて気持ち悪い。
「今の、夢は……」
……違う。あれは夢じゃない。あれはきっと、これから起こりうる未来。確かに存在する、
「…………どうする」
下唇を強く噛み、僕は思案する。もしあれが、この世界線で現実になったら……。駄目だ、そんなことは許されない。たとえ神が許しても、この僕が許さない。
じゃあどうする? 今日の買い物に僕もついて行くか? ……いや、それでは根本的な解決にはならない。13は本気でAを狙っている。今日告白できずとも、明日か、明後日か、どこかのタイミングで必ず彼はAに自分の思いをぶつけるだろう。
……あまり考えたくないが、その場合、Aの反応もさっき見たのと同じものになるのだろうか。
「…………そんなの、嫌だ」
ギッ、ときつく右手を握る。あまりに強く握りすぎたためか、手の平に自分の爪が食い込み、そこから血が溢れた。
「嫌だ、そんなの、嫌だ、A、愛してる、誰よりも、だから、嫌だ、嫌だ、A、僕のものに、A、AAAAAAAAAAAAA……」
気がつけば、口から言葉がとめどなく溢れ出していた。纏まらない、やり切れない思いが、口をついて飛び出す。
「……誰にも、渡したくない」
半ば無意識に呟いた自分の言葉で、僕は我に返る。……そうだ。僕の願いは何だ。Aを誰にも渡したくない。それだけだ。……そして、僕にはその願いを叶える力がある。
「A、僕は……」
血の滲む右手の平を見つめながら、僕は一人、部屋の中で呟いた。
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パト(プロフ) - ドリメアンさん» リクエスト、書き終わりました。確認をお願い致します。何か至らない点がありましたら遠慮なくお申し付けください。この度は、書いていて楽しいリクエストをありがとうございました! (2021年6月27日 10時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - ドリメアンさん» リクエストありがとうございます!ヤンデレですか……。書いたことはないのですが精一杯頑張って書かせて頂こうと思いますのでしばらくお待ちください。 (2021年6月13日 16時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
ドリメアン - リクエストです。零夜でヤンデレで他の男子キャラに追い詰められて夢主を別の世界に連れ去るのが見たいです。 (2021年6月13日 16時) (レス) id: 352fae32d2 (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - かずさん» クールな零夜くんがただのヤバい人に……何をしているんだ私は。 (2021年5月3日 7時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
かず(プロフ) - 零夜君!? (2021年5月2日 23時) (レス) id: b2c4a9da46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パト | 作成日時:2020年12月28日 18時