背後に近寄る影の正体 ページ7
エイトはサザンビーク城を出ると、背後に気配を感じたので、相手の動きを探るべく、あえてルーラを使わずに歩いていた。
そして、少し歩いたところで止まる。
確実に、自分を追いかけている。
「…誰だ」
エイトは静かに問いただす。
するとつけてきていた影がエイトの目の前に姿を現した。
それは醜い姿をした魔物だった。
パッと見だけではそこらへんの魔物と色違いな見た目だが、まっ黒な魔物だ。
エイトはこの手の魔物と戦った事がある。
ラプソーンが復活したあの日、突如現れた魔物だ。
それはつまり…
「お前がラプソーン様を殺した犯人か?」
ラプソーンの手下であるということ。
ラプソーンという親玉は倒したが手下はまだ残っていたのだ。
エイトは答えるまでもなく剣に手をかける。
ゆっくりと引き抜き鋭く相手を見据える。
そして魔物に飛びかかる。
「おっと、俺に傷でもつけたらミーティア姫がどうなるか知らねーぞ?」
エイトは直前で剣を止める。
この名前を出されてしまえばエイトは格段に弱くなる。
なぜ魔物がそんな事を知っているのか…。
エイトは無言で睨みつける。
「なんでそんな事を知ってるかって?お前を恨んでるやつから聞いたんだよ。聞いたっつっても独り言だったけどな」
サザンビーク城でエイトを恨んでいるであろう人物はおそらくただ一人だ。
ミーティア姫との婚約を破棄されたうえ、エイトにとられてしまったのだから恨みは確実に持っているだろう。
自分から動こうとはしない弱虫なくせに恨みだけは立派に持つやつだ。
「俺的にミーティア姫がどうなろうが知らないんだけど。お前が大人しくついてくるなら手を出さねーよ」
「……絶対に?」
エイトは剣先を向けたまま問いかける。
エイトの瞳に殺意は宿っているが、身体は動かそうとしていない。
「もちろん。」
「…ヤンガス達にも手を出さないと誓えるか」
「ソイツらは知らねーけど。でも俺は主犯を殺せば満足だからさ」
エイトは剣を降ろす。
「意外と話の分かるやつだな。それじゃ、ついてこい」
エイトは無言で魔物についていく。
魔物はエイトに見えない角度でニヤリと笑った。
エイトを助けに来た奴ら共々殺してしまおうと考えているのだ。
その場にはエイトのポケットから滑り落ちたまもりのルビーが残されていた。
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作者名:如月フウカ | 作成日時:2018年4月28日 19時