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二人の願い、一人の想い ページ29

神は二人の意図を理解し、腕を組んで悩みだす。誰かを特別扱いする事はあまりしたくはないのだが…彼らの運命を思うとハッキリと断ってしまってよいものかと情け心が邪魔をする。
「私からもお願いします」
どこからともなく現れ、そう優しげな声を発したのは鎧姿の優しそうな青年。かつて七賢者の末裔として狙われ、ドルマゲスの二番目の犠牲となってしまい、彼を慕う妹を残してこの世を去ることとなった…サーベルトだ。三人に頭を下げられ、神が険しい表情で唸る。
サーベルトは答えが出ずに沈黙を貫いている神の様子にたまらず顔を上げる。
「あの青年は悲しみにくれていた妹…ゼシカを旅に同行させてくれたんです。…彼には感謝してもしきれない…どうかお願いします」
そして再び彼は彼の被っている立派な兜が滑り落ちてしまうのではないかと思うほど深く頭を下げる。
神は「うーむ」と少し唸ったが、こうまで真意に頼まれてしまったら断る理由も見つからない。こうする事で彼らの運命が少しでも報われるならば…神はそう考えたようだ。まず最初に人差し指を竜神族の娘へと向け、そしてゆっくりとその指を横に動かし、王子へと向ける。するとその途端に二人の身体が淡く輝き出す。二人は驚きと嬉しさが入り混じった期待に満ちた目を神に向ける。その視線を向けられた神は少し照れたのか二人から視線をそらす。
「仕方がない…世界を救った勇者様の身内の願いではわしも断れんからのう」
先ほどまでの険しい表情は嘘のように消えており、神は優しく微笑む。
二人はその言葉に喜んでその場で飛び上がる。
「ありがとうございます、神様!」
竜神族の娘は嬉しさのあまり美しい瞳に涙を浮かべ、片手で涙を拭い、片手で王子の手を強く握っている。
「サーベルト君、君もありがとう!」
同じく神に礼を言おうと口を開いた王子だったが、感謝すべき対象がもう一人いた事に気づき、サーベルトに声をかける。
「いえいえ。ゼシカに会ったらよろしく伝えていただけると、幸いです。」
サーベルトは礼なんていらない、とでも言うように首を横に振り、後半は寂しげな笑顔を浮かべてそう呟いた。
「立派なお兄さんね。分かったわ。ゼシカちゃんに伝えておくわね!」
竜神族の娘は王子から手を離し、代わりにサーベルトの手を強く握る。突然手を握られて驚いたサーベルトだったが、「ありがとうございます」とだけ返し、強く握り返した。

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作者名:如月フウカ | 作成日時:2018年4月28日 19時

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