ope.83 ページ36
原side
僕は今、加地先生とAさんの病室に向かっている。
加地先生にも、大門君に来てもらうようにAさんに言って欲しい、と思ったから。
「失礼します」
ノックして病室のドアを開けAさんを見た。
元々華奢な彼女が癌によってさらに痩せた。
生気を感じられない。本当に辛いだろうな…
「木村さん」
加地先生はAさんに向かって言った。
「もう1度、考えて欲しい。大門も帰ってきて木村さんが亡くなった、なんてことがあったら本当に辛いと思う。それはわかるよね？」
そう尋ねられると小さい声でAさんは答えた。
「…わかります…」
「じゃあ、大門のためにも大門のオペを許可してくれる？」
「…それは…できません。もし私が死んだら顧問弁護士辞めた、とでも言っといてくださいよ。」
「そんな嘘…とても言えないよ。Aさん、お願いだからOK出して…」
僕ももう1度Aさんにお願いした。
「だから、それは…無理です。原先生…私のオペ、してくれませんか？」
その質問に僕は少し詰まった。
もし失敗したら…
「手術しなかったら…死ぬ。成功すれば生きれるかもしれない。どのみち、ほっとけば死ぬんです。だからどんな結果になっても私はそれを受け入れます
…原先生、お願いします。」
「分かった…じゃあちゃんと検査して手術しよう」
Aさんの切実なお願いに僕は了承した。
「原、じゃあ俺はお前の第一助手につく。」
加地先生はそう僕に救いの手を差し伸べた。
「木村さん、これで大丈夫？」
加地先生はAさんに尋ねた。
「はい…我儘を聞いてくれてありがとうございます。よろしくお願いします。」
大門君を呼び出す、というお願いはのんでもらえなかったけど手術をする方向に持っていけて良かった。
患者の気持ちに寄り添う医療がモットーの僕にはそれでいいと思った。
でも…Aさんを…死なせたくない。
だから僕に出来ることをやるしかない
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作者名：espoir･affettuoso x他1人 | 作成日時：2017年3月16日 17時
