ope.72 ページ25
原side
Aさんを紹介所に送り届けて自分の家へと車を走らせる。
＿＿＿＿「あの、原先生。これから私のことは、下の名前で読んでほしいんですけど…」
さっきの彼女の言葉が頭から離れない。
あの時は何故か冷静に受け答えが出来たけれど…正直パニックだった。
いや、勿論いい意味で。
「名前で呼んでほしい」＝「脈アリ」だと思ってしまうのはとんだ勘違いだろうか。
もしかしたらAさんが僕のことを好きなんじゃないかと思ってしまうのは自惚れだろうか。
長年片想い…それも本当に淡い片想いしかしていなかった僕は恋愛があまりにも下手くそで、こういう時にどうすればいいかわからない。
大門君を落とした加地先生ならどうすればいいかわかるのかな。
こんな事で電話するのは恥ずかしいけれど…相談してみようっと。
僕は車を停め、スマートフォンを取り出して加地先生の携帯に電話を掛けた。
「もしもし？原、急にどうした？」
ワンコールで先生は電話に出てくれた。
それだけでなんだか妙に安心する。
「いや、大した様ではないんですけどちょっと恋愛相談がしたくて…」
「恋愛相談？お前、急にどうしたんだよ。」
「実は…元患者が好きになってしまって。告白とかしたいんですけど相手は10歳以上年下なのでどうしたらいいかわからなくって。」
「なぁ、それって…もしかして…」
「加地先生ならどうしますか？こういう時。」
僕は加地先生が勘付いた事を言葉にしてしまうのを遮って質問をした。
恐らく先生はもう僕が誰が好きなのかわかってしまっただろう。
でも…成就するまでは黙っていてほしい。
自己中心的思想なのはわかっているけれど。
先生はそんな僕の想いを察してくれたのか
「あぁ。お前が告白したいならすればいいんじゃね？」
これ以上僕には何も聞かずにアドバイスをしてくれた。
こんないい先輩…そしてドクターはやっぱりどこにも居ないな。
「そうですね…有難うございます。では失礼します。」
「おう、頑張れよ。」
僕はさっきよりもスッキリとした気持ちで再び車を走らせた。
そして決心した。
『次のデートで告白しよう』と。
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作者名：espoir･affettuoso x他1人 | 作成日時：2017年3月16日 17時
