ope.68(続き) ページ21
でもそれよりも彼女は…僕の好きな人なのだから。
数年前、木村さん…いやAちゃんが入院していた頃僕は何回か彼女と話をした。
最初は普通に可愛い女の子だなとしか思っていなかったけれど、話している内に時折見せる消えてしまいそうな儚い表情や太陽のような弾けんばかりの笑顔に惹かれていく自分がいて。
そうは言っても患者に恋愛感情を持ってはいけないことはわかっていたし、それに本人に確認していないから定かでは無いけれどきっとAちゃんは加地先生が好きなんだと思うから僕は想いを誰にも伝えることなく彼女の事は極力考えないようにしていた。
だけど…やっぱり会ってしまうと「この人が好き」って想いはグングン膨らんできてしまう。
ここで「好きな人の事忘れられるわけがない」ってちゃんと言えたらどんなに楽だろう。
でも僕はそんなこと出来ないから…
「いやあ、そりゃあ大門くんが毎日のように木村さんのこと言ってたからね」
こう答えるしかない。
僕が答えると木村さんは何故か少し寂しそうな顔をした。
何かいけないことを言っただろうか。
「何かあった？」
心配になった僕は彼女の顔を覗き込んで尋ねた。
しかし木村さんは小さく首をかしげて「え、なんでそう思うんですか？」と大きい目をパチくりさせながら不思議そうに聞いてくるだけ。
どうやら僕の気のせいだったみたいだ。
「いや、何でもないならいいよ。でもなにかあったら言ってね。僕にできることならするよ」
僕は微笑みながらそう言って、紹介所にお邪魔した。
今日の麻雀はドキドキして勝てそうにないけれど。
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作者名：espoir･affettuoso x他1人 | 作成日時：2017年3月16日 17時
