Doctor-X〜私の入院生活〜

ope.32 ページ33

加地side

｢それにしても…お前いつからこんなに料理上手になった？｣

俺はまるでお店にあるかのような美味しいガトーショコラを頬張りながら何気なく大門にそう尋ねた。

すると大門は途端に気まずそうに目を逸らす。

(一体どうしたんだ？)

俺が不思議に思っていると大門が重々しく口を開き

｢あ…違うの。これ、城之内が作ってくれたの…私が作ったのはボロボロで…｣

と言った。

ああ、そういう事か。

でも｢私が作ったのはボロボロで｣って事はコイツは俺のために作ってくれたんだよな？

城之内の作った完璧なガトーショコラは勿論美味しいけれど、俺が食べたいのは…

｢お前が作ったやつ持ってきて？｣

そう、ボロボロの方だ。

しかし大門は

｢本当に下手だから。加地ちゃんお腹壊すよ？｣

と俺の健康の心配をして一向にガトーショコラを持って来ようとしない。

(おいおい、お前いつからそんなに可愛らしい感じになっちゃった？)

俺は心の中で彼女の性格の変化に喜びながらも

｢いいから、ほら。｣

とぶっきらぼうに言った。


数分後…

ボロボロのガトーショコラを渋々取りに行った大門が戻ってきた。

そのガトーショコラは…うん、見た目は悪い。

一口かじる…うん、味は御世辞にも美味いとは言えない。

それでも…

｢俺はこっちの方が好きだけど？｣

そう、こっちの方が俺の好みだ。

だって料理の苦手な大門が俺のために作ってくれたんだぞ？

こんな嬉しい事ねーよ。

大門は耳まで真っ赤にして

｢は？味覚おかしいんじゃない？オペしてあげよっか？｣

と言ってくる。

相変わらずだな。

｢お前なぁ…。味じゃねぇんだよ。本当に好きなやつからの手作りが1番美味いに決まってんだろ。｣

俺は率直に想いを伝えた。

｢え…加地ちゃん私のこと好きなの？｣

気づいてなかったのかよ。

｢当たり前だろ…って俺何言ってんだ。迷惑だったよな。ごめん。｣

俺は言葉の途中で自分の暴走に気づき、大門に謝った。

しかし彼女は

｢迷惑なわけないじゃん。私も加地ちゃんの事が好きなんだから。｣

俺の予想をはるかに上回る前向きな答えを出してくれた。

｢じゃあ付き合ってくれるか？｣

俺が恐る恐るそう聞くと、大門は

｢致しません。結婚したい。｣

と悪戯な笑みを浮かべながら言った。

｢お前、気が早すぎ。｣

俺達は2人で楽しく笑いあった。

ope.33→←ope.31

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す