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「口程にも無ぇな」
宇髄の斬撃で身体中が切り刻まれた男鬼は何故か未だにニヤついた顔をしていて、寧ろ先程以上に不気味な笑みを浮かべていた。
「何だその笑い方は！地味に気色悪ぃ野郎だな！」
「そりゃあな？お楽しみはこれからなんだからよ」
そう言うと男鬼は腕から垂れる血を一舐めし、血塗れの腕を持ち上げ前に突き出し、ぎゅうと強く拳を握りしめた。
その瞬間、宇髄の足元に散らばっていた男鬼の血溜まりから腕の様な形をした血液が飛び出し、間一髪で空中に飛び退いた宇髄だったが、何処までも伸びた素早い其れによって身体をガチリと拘束され勢い良く地面に叩き付けられた。
「ガハッ…！」
「宇髄！」
「余所見してる場合かしらっ！」
地面に叩き付けられた宇髄に気を取られた杏寿郎は、女鬼からの攻撃を避け切れず鋭い棘の付いた蔦で脇腹を打ち付けられ弾き飛ばされ、木の幹に身体を強打してしまった。
地面に拘束されている宇髄と弾き飛ばされた杏寿郎を見たAはこんな所で隠れている場合では無い！闘え！と己を奮い立たせれば、杏寿郎が掛けてくれた大きな羽織に腕を通し、ボロボロになってしまった着物を裂いて羽織を括り刀を握り締めた。
炎の呼吸の呼吸を使えば確実に杏寿郎に怪しまれる。
今のAは天子であり、宇髄の継子なのだから音の呼吸を使えなくてはならない。
一か八か見様見真似で音の呼吸を使うしか無かった。
宇髄とは任務では一緒になったのは初任務のあの日と今回の任務のみで、必死に宇髄の技を記憶の中から絞り出す。
「あの子は貴方には合わないの、私が貰ってあげるわ？貴方より沢山可愛がってあげるの」
「天子を鬼に易々とくれてやる訳あるまい！」
「往生際が悪いわね！益々気に入らない…わ！」
女鬼は棘の蔦になった両腕を杏寿郎へ勢い良く伸ばした。
迫り来る蔦に刀を構えた杏寿郎は地面がジワリと歪んだ事に気付かない。
「直ぐ感情的になるのはお前の悪い癖だって言ったろ」
「煉獄！下だ！！」
「遅ぇよ」
地面から勢い良く伸びた血の腕にガシリと拘束されてしまった。
「よもや！？」
ガシリと拘束され身動きの取れなくなっている杏寿郎目掛けて女鬼の蔦が迫っていた。
「音の呼吸、伍ノ型 鳴弦奏々！」
Aはひゅんひゅんと刀を回転させ持ち前の速さで女鬼と杏寿郎の間に割り込み技を出す事が出来た。
しかし刀は一本で爆薬も仕込んで無い故に威力は格段に下がるものの、杏寿郎への直撃を回避する事に成功した。
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作者名：カピバラ | 作成日時：2021年2月20日 9時
