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湯浴みを済ませ、風柱様からお借りした着流しに袖を通せば思ったより大きくて裾を踏んでしまいそうだし油断すれば肩あたりがずり下がってしまいそうだ。
例えズラ落ちたとしても晒しを巻いているし問題ないだろうと気にせず帯でどうにか誤魔化した。
「御先に頂きました」
「おー、ちィと大きかったか…ってお前それまだ髪濡れてんじゃねェか!しっかり拭けェ!」
そう言えば貸せと手拭いを奪い取り、座れと風柱様の目の前に座らされガシガシと髪を拭き始めた。
「わわっ、子供じゃないので自分で拭けますよ」
「あぁ?俺より遥かに歳下が何言ってやがる」
「二十と四つは立派な大人です」
「は?」
ガシガシと動いていた手がピタリと止まり、どうかしたのか?と離れて振り向けば、信じられないといった顔で目を見開き此方を凝視している。
「…に」
「ん?今何と?」
「本当に二十四かィ?」
「嘘を吐く意味は有りませんし」
「…すまねェ」
すると突然ばっと離れたかと思えば、正座して頭を下げた。
突然謝り出したのでどうしたのか伺えば、己より二つ三つ歳下だと思いやった行動だったと再度謝罪をされた。
見た事ある光景に思わずクスリと笑えばポカンと此方を見る風柱様がいて、師範にも宇髄殿にも同じ反応をされましたと伝えれば気不味そうに頬を掻いた。
それか杏寿郎や宇髄にも伝えた通り、柱なのだからお気になさらず先程と同じ様にと伝えれば何処かやり切れない様な顔をしたが、了承して頂けた。
「その代わりと言っちゃァ何だが、その風柱様ってのを止めてはくれねェかィ?」
「えっと…不死川殿…?」
自己紹介はお互いにしていなかったが、杏寿郎から柱の話は聞いていたので記憶を辿りそう言えば、彼は満足そうに頷いた。
Aは髪が途中だったと思い出し、手櫛で髪を束ねれば懐にしまっていた簪で髪を纏めた。
その姿を不思議そうにジッと見つめてくる不死川に、どうかなさいましたか?と首を傾げれば、男なのに簪たァ珍しいなと言ってきた為、元簪屋だったと伝えれば納得した様に頷いた。
「似合ってる。流石簪屋ってなァ」
「有難う御座います。この簪は杏寿郎さんと千寿郎から、こっちは宇髄殿から頂いた物なんですよ」
シャラリと簪に手を滑らせ愛おしそうに微笑んだAを、不死川は思わず見入ってしまった。
Aは其れに気づく事なく宝物なんですと伝えた。
「そこまで大事にしてもらえりゃ、贈った彼奴等も嬉しいだろうよォ」
「そうだと良いですね」
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作者名:カピバラ | 作成日時:2021年2月20日 9時