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木刀を振り上げた瞬間、身体に激痛が走り気が付けば風柱様から少し離れた所で横たわって居た。
身体の痛みと何が起こったのか理解が追い付かず困惑していれば、先程まで離れて居た筈の風柱様がAの身体を跨いで木刀を振り上げていた。
そのまま振り下ろした木刀は確実にAの頭を狙っていて、間一髪の所で避ける事が出来たのだが、ガッと音を立てて木刀が地面に刺さっていて、もし避けてなければ確実に顔面を貫いていた其れにゾッとした。
チラリと風柱様を見れば、片脚を高らかに上げているではないか。
左は木刀で避けられない為右しかない避けようが無い、とてもまずい、そう思った瞬間にその脚が勢い良く落とされた。
パシッと風柱様の足首を掴めば、目の前には足の裏が広がっていて、掴んでなければ顔面に脚がめり込んでいた所だろう。
杏寿郎と手合わせした時のもキツくて大変だったのだが、ここまで命の危機を感じたのは初めてだった。
「なぁおい、そんなもんかァ？おら、早くしねェと踏み潰しちまうぞ？」
風柱様は楽しそうに掴まれた脚に力を込めて今も尚顔面を踏み潰そうとしてくる。
「容赦無いです、ね！」
Aは片脚を振り上げた反動を使って下に下がれば、掴んでいた脚が頭上に降ろされ体制が前のめりになった瞬間、背後から両脚を風柱様の頸に回して力を込めた。
ドサッと鈍い音が聞こえれば、うつ伏せに地面に伏せている風柱様の背中に跨ったAが居た。
「勝負有りですね」
「油断してんじゃねェぞ」
ニヤリと笑った顔を見た瞬間、後頭部を何かに強打され一瞬目の前が白くなったと思えば、背中に地面の感覚と首元に木刀を突き付けた風柱様が此方を見下ろして居た。
「木刀を投げた手元をしっかり見とくべきだったなァ、詰めが甘ェんだよ」
「流石柱ですね、参りました」
「まだ終わっちゃねェぞ。ほら立って構えやがれ」
「はい、お願いします！」
それから何本も交戦し、風柱様が飽きるまでそれは続いた。
地面に転がりぜぇはぁと荒い呼吸を繰り返し瞳を閉じているAに風柱様が近寄って来て、ほらよと手拭いを渡された。
「有難う御座います」
「体術、剣技共に中々悪くは無かったが、ちぃと油断しがちな所が有る。その油断が命取りだァ」
「はい、気を付けます」
起き上がり受け取った手拭いで顔を拭っていれば、付き合わせて悪かった、湯浴みでもしていけと言われ御言葉に甘える事にした。
空を見上げれば薄らと朝日が登り始めていた。
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作者名：カピバラ | 作成日時：2021年2月20日 9時
