71【勇躍編】 ページ21
任務地が真逆なのにも関わらず、Aの任務地まで一緒に行こうと言う杏寿郎をどうにか交わして、やっと鬼の被害にあった山まで辿り着いた。
辺りを見渡せばシンと静まり返っていて、可笑しいと思い更に奥へと足を進めれば、微かに漂う血の匂いに弾かれたかの様に其方へ向かって走った。
近づけば近く程血の匂いが濃くなって、目の前には無数の何かが転がっていて、近いて見れば負傷している隊士達である事が分かれば鎹鴉に隠を呼ぶ様に手配して直様駆け寄った。
微かに息をしている隊士にホッとして、人を呼んだからあと少し頑張ってと隊士の顔にこびり付いた血をそっと親指で拭い取り安心させる様に微笑んだ。
他の隊士達の為にも早く鬼を見つけ出さなくてはと走り出した。
程なくすれば奥から悲鳴が聞こえ、急いで其方に向かえば鬼が隊士を片手で掴み上げているではないか。
Aは刀を構えて深く呼吸をした。
「炎の呼吸、壱ノ型 不知火…!」
「風の呼吸、壱ノ型 塵旋風・削ぎ!」
Aが技を出し隊士を掴み上げている鬼の腕を切ったと同時に、激しい風が吹き付けて何かが鬼を斬首していた。
辺りには鬼の気配も無くなり、解放されぐったりとして動かない隊士に駆け寄った。
「良く頑張りましたね、後は任せてゆっくり休んで下さい」
其れを聞いた隊士は良かったと力無く微笑むと、意識を手放した。
Aはお疲れ様ですと己の羽織をその隊士に掛けてやれば、背後から声を掛けられた。
「お前は怪我はして無ぇのかィ?」
先程の聞こえた声と同じで、私は問題有りませんよと振り向けば其処には白髪で身体中が傷だらけの刀を持った男が此方を見ていた。
隊服も着て居ない為一般人かと思い、貴方の方が心配ですと伝えれば何ともねェよと言われた。
すると何処からとも無く隠が到着した為、指示を出していれば突然隠達が怯え始めた。
近くに居た隠にどうかしたのか?と問い掛ければ先程の傷だらけの白髪男は風柱だと教えてくれた。
あの方が…と彼を見ればパチリと視線が合った。
その瞬間、隣に居た隠がヒィッと小さな悲鳴を上げ、凄い速さで御辞儀をして走り去って行ってしまった。
余りにも突然の出来事で唖然としているAに、風柱と呼ばれた男が近づいて来た。
「もしかして煉獄ん所の継子かィ?」
「お初にお目に掛かります。ご存知の通り炎柱様の継子をさせて頂いております、名をAと申します」
跪き頭を下げれば、堅苦しいから止めろと言われてしまった。
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作者名:カピバラ | 作成日時:2021年2月20日 9時