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「待たせてすまない!道中に何体か鬼を倒していて遅くなってしまった!」
勢い良く入って来たのは杏寿郎で、まさかの登場に舌打ちをした宇髄はボソリと何かを呟いたが聴き取れなかった。
ガシガシと頭を掻き、間合いが悪い!と杏寿郎に向けて怒鳴った宇髄を気にする事もなく、今回の任務は宜しく頼む!と笑っている。
Aはポカンとしたまま二人を見た。
何故此処に杏寿郎さんが居るのか、今回の任務は宇髄殿だけでは無いのかと考える。
しかし二人の話を聞いている限り、宇髄と杏寿郎は知っていた様だと理解した。
「宇髄!君は女房が三人居るにも関わらず、他の女性に手を出すのは如何なものかと!」
「まだ出してねぇよ!鴉で伝えただろ、他にも連れて行くってよぉ!」
「まだとは何だ!見損なったぞ!」
一気に騒がしくなった空間に着いていけないAはAで、己の格好は今女性の格好で杏寿郎に気付かれてしまうし、もしAだと気づいたら騙していた罰で出て行け!などと言われてしまうのではないだろうか?と冷や汗をかいていた。
「宇髄に何もされていないだろうか?」
「あ、はい。特には」
「そうか!何かされそうになったら俺に言うと良い!知ってるかも知れないが、俺は炎柱の煉獄杏寿郎だ!今回の任務、宜しく頼む!」
「へ?え…あ、はい。よ、宜しくお願い致します」
真逆気付かれていない…?思いもよらない杏寿郎の自己紹介に宇髄をチラリと見れば、此方も予想外だった様で鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「君の名前を教えてはくれないか?」
これで名前を教えて終えば気付かれてしまうと口籠もりもう一度宇髄の方へ助けを求める視線を送れば、これまた何とも楽しそうな物を見つけた様な悪いの顔をしているでは無いか。
嫌な予感がして自ら名乗ろうとした瞬間、バッと肩を組まれたかと思えばその大きな手で杏寿郎に気付かれ無い様にAは口を塞がれてしまった。
驚き抵抗しようとするAをもう一方の立派な片腕で押さえ込み耳元で、俺に任せろと囁いた。
「此奴の名前は天子、俺の継子だぁ!」
「!?」
「何と!継子を取ったのか!」
予期せぬ継子発言に驚き宇髄を見上げれば、なぁ天子、お前は俺の継子だよな?と圧を掛けられれば最早頷くしか出来なかった。
「君は何処と無く俺の所の継子に似ているな!」
そりゃそうだろう本人なのだから、と心の中でつっこみ何故気付かないと頭を抱えた。
「きょ…炎柱様、宜しくお願い致します」
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作者名:カピバラ | 作成日時:2021年2月20日 9時