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「よお、今暇か?」
「見ての通り洗濯中ですが…如何なさいましたか?宇髄殿」
ばさりと洗濯物を干しながら、塀の上に居る宇髄にそう伝えれば今から俺に付き合えと言って来た。
宇髄とはあの日任務で一緒になって以来、何故だか宇髄の任務の付き添いになる事が多々あり、その度に杏寿郎が任務直前までAの近くを着いて回る様になったのだが、それはまた別の時に。
最後の一枚を干しながら休日だしこの後は特にやる事も無かったなと考えていれば、突然背後から大きな声が聞こえた。
「宇髄、君は何度言えば門から入ってくるんだ!それからAはこの後、俺と稽古の約束をしている!」
そんな約束していたか?と疑問に思っていれば、ガシリと肩を掴まれて振り返ると杏寿郎が宇髄を見ていた。
「ふーん、稽古ねぇ…。そいつぁ残念だな、せっかく美味い里芋の煮物を食わせてやろうと思ったのになぁ」
ニヤつきながらそう言った宇髄の里芋の煮物と言う言葉にAはピクリと反応した。
肩を掴んでいた杏寿郎はピクリと反応したAをチラリ見ると、美味い里芋の煮物…とぽそりと呟きキラキラと眼を輝かせているではないか。
「そんじゃあ俺はもう用も無えし、帰るわ」
「あ…」
「…待て宇髄!俺もその煮物を食いに着いていっても良いだろうか!」
此方に背を向けヒラリと手を振った宇髄に思わず声が出たAは少し寂しげで、それを見た杏寿郎は去ろうとした宇髄を引き止めた。
Aは真逆杏寿郎が引き止めるとは思ってもみなくて、キラキラとした瞳を杏寿郎に向けた。
宇髄はピタリと一瞬止まってから振り返れば何とも良い笑顔をしていた。
「別に構わねぇけどよ、稽古すんじゃなかったのか?」
「話を聞いていたら腹が減ってしまったからな!それに休息も必要だろう。A、俺も着いて行って良いだろうか…?」
杏寿郎がAの様子を伺う様に覗き込めば、再び瞳をキラキラと輝かせて、勿論です!と頷いた。
着流しに着替えた三人は並んで街並みを歩いていれば、女性達からの黄色い声と熱い視線を浴びた。
Aを挟んで歩く二人をチラリと見上げれば、確かに女性達が黙っていない程の男前な二人。
Aより遥かに背丈が高く、着流しを着用していても分かる体格の良さ、そして何より二人共顔が良いのだ。
其れを目の当たりにしたAはしゅんと落ち込んでいた。
実際Aも小柄ながらに顔立ちは良く、街の女性達は三人に騒いでる事をAは気付かない。
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作者名:カピバラ | 作成日時:2021年2月20日 9時