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正確な時間は分からないけど、もう数十分は刃の応酬が続いている気がする。
突撃する。躱される。切り上げる。側面を撫でるように軌道をそらされる。振り下ろす。軽やかなステップで避けられる。分かってはいたけど、それでもこの猛攻に息ひとつ切らさない様を見ると、イミテーションを相手にしているような気分になる。実際の力で言えば、間違いなくそれ以上のバケモンだとはいえ。

「ハ、うっそだろ……こんだけやってもまだ余裕なのかよ……」

肩で息をついて、悪態をつく。言葉の代わりに槍の柄の薙ぎ払いが飛んできて、木々の方へふっとばされる。背中に感じた衝撃に肺から一瞬全ての息が抜けて、地面にずり落ちると同時に咳き込んだ。

撤退したスコールとバッツは、援軍を連れて戻ってくるだろうか。正直なところ、束になってかかったところで勝てる保証はない。まだ彼女は槍しか使っていないのだから。認めるのは悔しい限りだけど、まず間違いなく手加減されている。もしくは、遊ばれている。

「──『二重バインド(バインドチェイン・ダブル)』」

声に応えるように、木を背にして動けない俺の足下から茨が伸びて、腕や脚を覆っていく。痛みを堪えて精一杯引っ張っても、伸びてしなるだけで繊維の1本さえちぎれない。棘がないから刺さって怪我をしないことだけは、不幸中の幸いかもしれない。いやそんなわけねえわ。

(くそ、外れねぇ……!)

必死になって暴れていると、海と森とを混ぜたような色の髪が、赤い目が迫る。反射的に目を閉じる。
予想していた衝撃は来なかった。

「ねえ、キミ。そんなカッコにした私が言うのもなんだけど、ちゃんと話をしよう。彼らが戻ってくるまで、さ」

代わりに耳をうったのは、いかにも余裕ですと言わんばかりの、のんきな声。せめてもの抵抗で睨みつけると、何を思ったか彼女は目の前に腰を下ろした。しかも、武器から手を離して。

「私ね、気が付いたらここにいたんだ。さっきの話を聞いてる限り、キミ達はまず間違いなく私よりこの世界に詳しいと思うんだけどさ。──ここって、なんなの?」

……はぁ?

「カオスの連中から聞いてないのか?」
「カオスって?」
「は?」
「え?」

これが演技だったらとんでもない名優だ。ぜひタンタラスに欲しい。じゃなくて。まさか、俺は早とちりした結果、召喚されたての迷子に剣を向けたのか……!?

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(プロフ) - コメ失礼します!FF好きには堪らん作品ですね!(^o^)更新頑張って下さい! (2021年5月20日 17時) (レス) id: 2b27f1dc52 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セキ | 作成日時:2020年4月27日 18時

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