探偵達はカフェにいる【オリジナル】 (ページ28)

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ラルムの兄ちゃん探して三千里ページ28

　なんだか最近皆さんが忙しかったのか、10人共来る頻度が少なくなったような気がする。きっと本来の仕事が忙しいんだろうな。いや、別に寂しくないけれどね？だってあの人達、ここでしょっちゅう殺人事件の話しやがるし。一般のお客さんもいるのになんでああいう事するんだろうね、業務妨害で訴えるぞ。

「あのー」

　申し訳なさそうな声が寂れたカフェに響く。声の主はラルム・フロイデ、ここの常連であるルヴァンシュ・フロイデの実の弟さんだ。流石は実の兄弟というべきか、同じように酷い癖がついた髪の毛なんだよね。
　外にぴょんぴょこ跳ねた薄い銀色の髪の跳ねを抑える為に、黒色のバンダナを結んでいる。しかもそれをうさ耳にしているのが何とも可愛い。そして、ルヴァンシュさんのものによく似た金茶色の瞳の少し垂れた目。髪の色は違くても、一眼で兄弟って分かる顔をしている。

「いらっしゃいませ、ラルムさん」
「Aさん、兄ちゃんって来ています？」
「いいえ」

　ラルムさんはしょんぼりと眉を八の字にして、疲れ切ったため息を吐いた。心なしか、バンダナのうさ耳も垂れている気がする。感情に合わせて動くタイプのうさ耳バンダナなのこれ？？？

「ルヴァンシュさんを探しているんですか？」
「はい……今日は仕事が入っていないから、サイモンちゃんの代わりに家事の手伝いをするって約束だったのに消えちゃって！一生懸命探し歩いたけれど見つからなかったから、てっきりここにいるかと思っていたんでけれど……」

　サイモンちゃん、とはフロイデ兄弟とアドニスさん、ミエーレさん、そしてネイリストのラグナさんが住むシェアハウス『ロッサ・カエルラ』の大家、サイモン・プロスクリスィの事。美容師であり、筋骨隆々で褐色肌のオネエさん。濃い化粧とムキムキ筋肉が特徴的な圧の強い人だ。一度このお店に来た事があるけれど、人当たりの良い優しい人だったなあ。どうやら今日は特にサイモンさんの仕事が忙しいらしく、代わりに家事をしてあげようという話になったのに、肝心のルヴァンシュさんが忽然と姿を消したらしい。トンズラしたのでは？あ、私は何て失礼な事を。

「待っている間、何か作りますよ。どうします？」
「え？どうしようかな……」

　と、その時。ルヴァンシュさんがお店にやってきた。

「悪いラリィ、実は急に仕事が入っちまってさ。片付けてきたから帰ろうぜ」
「そうだったの？僕に言ってくれれば良かったのに」
「なーに、兄ちゃんは平気さ。さあ、帰ろう」
「うん！」

　仲が良いなあ、フロイデ兄弟。