5話 ページ9
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同時刻、壊俐崇會では六乙が昨夜の出来事を思い出話のように語っていた。
「そんでさー、きゃんきゃんきゃん騒ぐわけよ、犬みたいでさぁ、すっごい笑えた！」
六乙が大口を開けて笑いながら話す相手は、四梛木麻日奈。彼女もまた、壊俐崇會の二大幹部の一人であり、奇抜な髪をしていた。
血液のような赤黒いショートヘアー。
その色から血液特有の鉄臭はしないものの、やはり血を被ったようなそんな赤黒い色であった。
「つか、麻日奈〜！ 髪、染め直したら？ プリンみたいになってるじゃん笑う」
六乙は、そう言いながら麻日奈の髪の毛を指差した。
確かに、六乙の指差す麻日奈の髪の毛は染めてから数日……いや、十数日経つのであろう。
血液を被ったようなその色は、つむじから生える黒髪の途中からである。
「笑うポイントがわかんないね。六乙ってなんか変。いや、“なんか”じゃないや、変、おかしい」
極道同士とは思えないような……そんな和気あいあいとした会話。
…………いや、違う。
六乙と麻日奈の手元がキラリと光った。
一本のナイフ。
一本のアイスピック。
やはり、この二人は反社会的主義者だ。
「ねぇ、少し刺さってんだけど」
「お互い様でしょ。六乙のだって私に少し刺さってる。わ〜、痛いなぁ」
両者がおのれの刃に力を込めようとしたその時だった。
六乙も、麻日奈も身体が動かなくなるのを感じた。手に入れるはずだった力もなくなり、重力によって、ナイフとアイスピックは床に身を落とした。
「……に、やってんだァ？おい」
陸津だ。若頭、北条陸津。
陸津は、床に転がるナイフとアイスピックを力一杯に踏みつけた。すると、普通、そう簡単に折れることのない二本がパキッと小さく音をたてて折れた。
「陸津……」
「頭……」
力なく陸津の名を口にする六乙と麻日奈。
「ガキみてぇなことしてんじゃねぇよ。……六乙、麻日奈、メイビスに
「あぁ、もちろんさ。私が調べあげて刺したんだ。確実だよ」
「ボコしてる途中にさ、命乞い始めるんだよ？ 助からないってわかってんのに。楽しみだなぁ……絶対に顔歪ませてこっちにけしかけてくるだろうよ」
「……はッ、そうなったら近くの晩餐は狼だね」
くつくつと、その場に響く笑い声。血も流れていないはずなのに妙に鉄臭く感じる。
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