4話 ページ8
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少しずつ空が明るくなり、街が目覚め出すその一角。
メイビス本部のドアに倒れかかった
「……ダメだ。三人とももう死んでる」
東雲が首筋に手を当てていたが、目を伏せて首を振った。
──数日前にメイビスの門を叩いた壊俐崇會の脱走者に至っては、四肢を折られ、歯は抜かれ、顔は原型を留めていなかった。
彼の護衛役だった二人も死んでいる。実力のある二人だった。
「見ろよ」
死体を見た瞬間から植え込みに手を伸ばしていた咲良が、そこに隠してあったカメラとパソコンを繋いだ。
「監視カメラの映像が差し替えられてる。ま、それくらい対策済みだから……っし、外せた」
昨晩、例の男が二人を連れて本部を出た様子が裏口のカメラに収められていた……が、それから一時間もしないうちに、こちらの監視カメラにずりっ、ずりっと何かを引きずるような音が聞こえてくる。
やがて。杜若のインナーカラーを入れた漆黒の髪を一つに括る女が、三人の男の頭を鷲掴みにしながら現れた。
「……っ」
拳に滴る鮮血は、夜闇の中でもよく見える。滑稽なほどに軽やかな足取り。どさり、とゴミ袋のように乱雑に男を放り、パンパンと手をはたく。
インナーカラーと同じ初夏の花の瞳が、ぬるりとこちらを向いた。途端に細まり、にっこり笑ってみせる。
「……ぁ、いつッ……！！ 差し替えの対策がされてること、気づいてやがる！ 気づいててわざと……！」
わざと重ねた差し替えをせず、自分の姿を見せつけた。その気ならできたことだろうに、自分たちのほうが技術も上だと、そのセキュリティは甘いと、屈託のない顔で嘲笑っている。
「咲良、落ち着け」
「るせえっ！ ここまでコケにされて黙ってられっかよ！！」
東雲を睨むと、彼女は視線を蓮水の背後に動かした。
黙り込む。
「……蓮水。そいつは」
「……例の壊俐崇會だ」
誰かしょっぴいてくるよと、蓮水は後ろを振り向かぬままその場を立ち去った。
残された東雲は口元に笑みを湛え、蓬莱のあとに続いて事務所の中に入る。
「……東雲」
「分かってるさ」
調べていた壊俐崇會の資料に示された代紋。壁に釘で打ち付けられていたそれの真ん中に、蓬莱の横スレスレを貫いたナイフが突き刺さる。
蓬莱はそのかみを引き裂いた。千々になった紙が漂う。
「やるぞ。神殺しだ」
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