23話 ページ27
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戦いが始まってから、既に数十分が経過している。凛は頬を撫でる血と汗の混じった何かを腕で拭った。
流石に疲れ始めた。膝に効いていたアドレナリンも、そろそろ切れ始める。となると、壮絶な痛みが再び襲ってくる。それまでに決着をつけなければ、格段に不利になる。
北条も利き手に大怪我を負い握り込むのも辛いはずだ。条件は同じはずなのに、勝負を決め切れない。
互角──……凛は、これまで感じたこともないようなことを思った。
面白い。これからが本当の勝負だ──！！
その時。メイビス本部で幾多ものコンピュータを前にした人物が、パチンとマイクの電源を入れた。
『──そろそろ頃合いよ。撤収しなさい』
「！」
ぴたりと動きを止めた凛に、陸津は異変を嗅ぎ取った。
「……」
『聞こえないの？』
「……嫌だ。こいつは、僕が今この瞬間に殺す」
一方、咲良も耳を押さえながら小声で何事か口にしていた。じっとその様子を観察する麻日奈。蓮水は何をしている？……。
その思考が、幹部三人が色違いでつけていたピアスに行き着いた時、澄ませていた耳に僅かながらハッキリと、透き通り凍りつくような女の声が聞こえてきた。
『……私の言うことが聞けないの』
バンッ。扉が開き、眩い光がその場を昼間のように照らし出した。全員がそちらに注目する。
「警察です！！ 武器をその場に置いて跪きなさい！！」
「「！」」
目を見開く。周囲は張っていた。騒音も、少なくとも町民にまでは届かないはずなのに、警察？ 一体誰が。
ブワッと鳥肌が立ち、陸津は振り返る。距離を取っていた凛が、すぐの目の前まで来ていた。
警察が来ることも分かっていたかのように、まっすぐに。何の迷いもなく、ただ北条を殴り付けるために。ニヤリと笑んで応戦しようと構え直す。
が。蓬莱を、東雲が掻っ攫った。肩に担ぐようにして廃屋の裏に走る。
「何するんだ春香！！ 下ろせ、あいつはここで殺すッ！！」
「無茶言わないでよ、お嬢の言葉聞いただろ？ 今日はここで引き上げる。そんな脚で、どうやって戦うつもりだ？」
「っ……！！」
ハーレーに飛び乗り、発進する。行きとは逆に、凛を後ろに乗せていた。
騒がしい廃屋を一睨みし、フッと微笑む。
「じゃあね、壊俐崇會さん。次はこうはいかないよ」
ドルン。ヘルメットの下で靡く髪が、さらけ出す耳元。
冷たい青色のピアスが、月明かりを受けて光った。
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