14話 ページ18
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……へえ、今の一発を受け止めるんだ。
二発、三発と殴り込みながら蓬莱は心の中で呟いた。
破壊力が売りの蓬莱の打撃。避けるならまだしも受け止めれば常人なら骨が砕かれているはずだ。
見た目からは分かりづらいが、受け止めるだけの筋肉があるということ。何度殴っても避ける様子が見えない……痛みを感じないのかと錯覚を起こしそうになる。
なら、これはどうだ？
跳躍は短く。脚は急所の高さを正確に。体をしならせ、あらゆる物理法則を総動員させた全力の蹴撃。
紅律──先代のメイビスの長直々から教わった蓬莱の一撃必殺が、北条のこめかみを──……。
「！」
受け止められた。いや、威力を
さっきまで動かず蓬莱の攻撃を受け止めるのみだった北条が、一歩踏み込んできていた。蓬莱の体に近い位置。当然威力は失われる。
……まずい！
「くっ」
ぐっと体を反らせた。床と平行になる蓬莱の体。その上を、北条の拳が滑る。
なんとか足を跳ねさせて距離を取った。
……今の一撃、受けていたらヤバかった。
「……へえ」
北条陸津、か。……僕の一番嫌いなタイプだな。
仲間を殺すことに躊躇いがないところも、戦いのさなかの煽る口調も、派手な見た目も、何もかも。
「……」
ジリッ、と蓬莱の靴裏が音を立て、次の瞬間には北条の目の前に飛び出してきている。
構えた北条のガードに向けて左拳。続け様に脇腹へ回し蹴り。飛んできた拳はきっちり捌く。
赤眼の餓狼。いつからかそう呼ばれるようになった。貪欲な狼は、相手が神であろうとなんだろうと、本能のままに牙を剥く。
そんな彼女は狭いところでの戦闘が得意だった。壁を使えば更なる威力の蹴りが、四方八方から放てる。相手の隙もつけるし、骨を砕きやすい。
しかし大抵は関係なかった。大男だろうとプロ格闘家だろうとテコンドープレイヤーだろうと、彼女の前ではただのクズと化したから。
しかし……どうやら、今回はそう簡単にやらせてはくれないようだな。
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