餓え狼とエリス神【極道パロ】 (ページ14)

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10話ページ14

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　昔は何かの倉庫だったのだろうか。体育館ほどの広さはあるその廃屋は酷く埃っぽく、がらんどうだった。
　積もった埃から、歩けば足跡ができるくらいだ。

　静かだった。雪の日の真夜中のように音が消えていて、それは耳鳴りすら聞こえてきそうなほどに。

　二十六時──つまり、夜中の二時。丑三つ時とも呼ばれるが、その名だけあって辺りには人ひとり見当たらなかった。
　そういえば、蓮水も騒音を気にしていたな──邪魔を入れず、確実に相手を潰し、それでいて家族(なかま)は守る、と。

　反吐が出る。

　日本時計が二十六時を指した。

　ゾワリ、と。
　背筋に走る何かに、陸津はハッと鼻で笑った。

　振り返った陸津の頭上。
　安全靴の踵が振り下ろされる。

　が。

「！」

　陸津はその足を掴んで止めた。

　そいつの襲撃から一秒にも満たない時間をおいて、暗闇から二つの影が飛び出し六乙と麻日奈に襲いかかる。

「っぁは！びっくりしたぁ！！」

　突然の襲撃だったのにも関わらず、黒いフードを被った彼女の一撃を腕で受け止める六乙。
　隣で麻日奈はわざと体勢を崩し、振るわれる拳を避ける。

　それらの反動で、三人のローブのフードが外れた。

　六乙に笑むのは青い髪。

　麻日奈に舌打ちするのは赤い髪。

　陸津をドミノマスクの下の真紅の瞳で睨むのは、藍の髪。

　メイビス・ファミリースリートップ。

　東雲春香。

　蓮水咲良。

　蓬莱凛。

　戦いの火蓋が切って落とされた。