恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ10)

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Side of Ryuto

急遽、部活が休みになった。

気まずさは確かに少し直ったけど

ちゃんと元通りになりたくて

Aと一緒に帰ろうかなって。

昼休み、彼女がいる教室に足を運んでみた。

「え、彼氏と帰るの？！羨ましい～！！」

「ちょ、…っ声大っきいから！！」

教室のドアに手を掛けた時

そんな会話が聞こえてくる。

ぴったりと止まる手。

そこでハッとさせられた。

もう " 元通り " なんてきっと無理だと。

チラッと見えるAの横顔は

照れてるけど嬉しそうで

悔しいけどアイツを想ってる顔なのに可愛い。

" できるできないじゃない、やりたきゃやればいい "

わかってる。その通りだよ。

だけど、そんなのやりたくても

できないこともあるよ。

『……………ただいま』

『おっ、いいとこに帰ってきた！！』

『嫌な予感しかしないんだけど』

1人で帰ってきた途端に

涼が嬉しそうに近づいてくる。

片手には財布。そしていい笑顔。

…………多分おつかいだ。

『しょうゆ切らしたから買ってきて』

『嫌って言ったら？』

『帰りにコンビニでアイス買っていいぞ』

『子供扱いは腹立つけどアイスは食べたい』

『んじゃ行ってこい✩』

制服のまま再び外に出されて、ため息をひとつ。

アイスで釣られる俺も俺だけど

今日は暑いしこんないい条件無いし。

玄関の鍵を閉めて足を進めようとすると

丁度そこにAが帰ってきた。

『…………A』

「あ、さくちゃん。…………おつかい？」

『まぁ、そんなとこ』

「ちょっとまって！私も行く！！」

『え、あ…いや』

普通に2人で話せる気がしないのに

彼女は鞄だけ玄関に置くと

おまたせ、なんて言ってくるから

今更1人で大丈夫だよとか言えなかった。

買い物に2人でなんて、前もあったのに

今日は無駄に気まずい。

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