恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ32)

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「よかった、…見つかって」

『ん、涼でしょ？大した事ないのにごめん』

「さくちゃん、いなくなったら

私もう死んじゃうよ」

『死なないよ』

「嫌なの、いてくれなきゃやなの。

いなくなっちゃ…っ」

ぽろぽろ涙をこぼして、

俺の目をまっすぐに見つめる彼女に

きゅうっと胸が苦しくなる。

俺だって、Aがいないと死んじゃいそうだよ。

いなくなってほしくないよ。

そんな苦しい気持ちしか、胸の中に存在しないほど

彼女に支配されてしまってるのに。

言葉には全部なんて到底表しきれなくて

歯がゆくなって、泣いてる彼女を抱き寄せた。

『わかった、も…わかったから』

「さく、ちゃ」

『いなくならないよ。

絶対Aのこと、一人にしない』

「っ…」

俺の背中に手を回して、服をつかむ手は

相変わらず小さくて頼りなかった。

けど、やっぱり俺にとってはそれがすべてで

すぐにでもアイツのとこに向かわせることなんて

できたはずなのに

腕の中に閉じ込める以外できない。

「私、ね…気づかされちゃった」

『え？』

「私の、私の一番は、さくちゃんだよ」

『それ…って』

傘なんてほぼ無意味に近くて

下に落ちてるのも気にせずに

二人してびしょ濡れになって。

ただ、お互いを見つめてしまえば

周りの音さえも無くなった。

スローモーションに見えるくらい

信じられない状況に

立ち尽くすしかできない俺に

彼女が背伸びをして口づける。

触れた柔らかさと少しの温かさに、

現実だと思い知らされた。

『っ…』

「すき」

『ほ、んと？』

「好きだよ、誰よりも」

ずっと、欲しかった。

何よりも手に入れたくて、でも壊したくなくて。

たくさん傷つけたかもしれなかったけど

やっぱり大事にしたくて。

本当に、Aだけが、欲しかった。

『好き。

…ほんとに、俺、Aがいなきゃダメなんだ』

彼女の頭の中が俺でいっぱいなうちに。

そう思いながら、

たくさんの思いをぶつけるみたいにして

何度もキスを繰り返した。

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