恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ4)

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Side of You

さくちゃんに見られてたなんて

なんか、なんていうか……こう、複雑。

『まぁ、……いいんだよ

変に気にしすぎなくても』

「でも…」

『Aちゃんと龍斗は、こんなことだけで

全部崩れちゃう関係じゃないと思うし』

「そう、かな？」

『Aちゃん』

こんなこと初めてで、自信が無くなって

どうしても考えが後ろ向きになってしまう。

そんな私を見て優しい声で涼さんが名前を呼ぶ。

うじうじすんな、って怒られるかなと

思って恐る恐る目を合わせると

それどころか涼さんはいつも通りの

穏やかな表情で綺麗な目を細めて。

『もうちょっとアイツに厳しくなっていいんだよ』

「へ…」

『龍斗は完全にAちゃんに甘えてるからね(笑)』

ふにゃんと笑いながら涼さんはそう言う。

『Aちゃんも遠慮しないで

たまには自分勝手になっていい』

「遠慮なんて…！」

『龍斗に構わず自分は自分の

楽しいことしていいってことだよ』

必死に首を横に振る私を宥めるように

ぽんぽん、と肩を叩くと

涼さんはクッキーを手に取る。

良かった、美味しく出来てんじゃん、なんて

得意げに笑って。

『でも、アイツもなんだかんだでAちゃんは

大切にしてきてたみたいだからさ』

「う、ん……」

『俺が言うのもなんだけど

彼氏だけじゃなくて、たまには構ってやって(笑)』

「涼さん……」

『大丈夫。龍斗はAちゃんのこと

愛想尽かしたりしないから、絶対』

涼さんに絶対って言われると

いつも根拠が無くても信じられる。

この不思議な感じはなんなんだろう。

それに、こうやって真剣に話してくれる時に

不意にその綺麗な目が寂しく見えるのは

なんでなんだろう。

『あ、あとこれ』

「え？」

『龍斗が昨日買ってきたんだけど

多分Aちゃんと食べる予定だったんでしょ(笑)』

不器用だけど受け取ってやって、と

机に置かれたのは私の好きなプリン。

きゅうっと胸が苦しくなる。

次会ったら、私はさくちゃんにちゃんと

……ちゃんと話しかけれるだろうか。

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