恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ22)

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Side of Ryuto

『…………Aっ、』

「っ……お、おはよ、さくちゃん」

駆け寄って声を掛けたのに

Aは足を止めるだけで

こっちを向いてすらくれない。

ごめんね。

もう何も言わないから。

『忘れてよ』

「へ…」

『この前言ったこと、全部忘れて』

Aと話せなくなる方がずっと嫌だって

今日気づいちゃったから。

全部全部無かったことにしちゃえば

今まで通りにはなれるかな？

『困らせることなんにも言わない。

ほんとに今まで通りでいいから……』

Aを呼び止めた時に

肩を軽く掴んだ手が震える。

元に戻ることさえも拒否されたら

その時はもう………。

だから、俺はずるくなるよ。

『………寝れないんだ』

「え？」

『やっぱりAが隣にいてくれなきゃ

俺ちゃんと寝れないんだよ』

本当は、ずっと前から1人でも寝られるよ。

そんなの分かりきった話だろうけど。

これが唯一彼女を繋ぎ止める方法なんだったら

情けなくたって、年相応じゃなくたって

そんなのどうでもいい。

「ごめんね、さくちゃん」

『っ…』

「…………………目、逸らしちゃってごめん」

俺を見て彼女の目がグラッと揺らぐ。

やっとこっちに目線を向けてくれただけで

泣きそうになるくらい安心した。

隣に並んで歩き出す。

ずるくてごめんね。

突き放した癖に

離れるなんて俺の方が無理だった。

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