恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ20)

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Side of Yuto

「ふふ、可愛い」

嬉しそうに彼女が抱きしめているのは

俺がさっきゲーセンで取ったぬいぐるみ。

ぎゅっとされてるソイツに

ちょっとヤキモチ妬いたとか

そんなことは口が裂けても言えない。

もう辺りはすっかり暗くなっちゃって

名残惜しいけど彼女の家への道を歩く。

学校が同じだったら、もうちょっと

この物足りなさが消えたりしたのかな。

『足、疲れてない？結構連れ回したけど…』

「大丈夫だよ(笑)優しいね、やっぱり」

『い、や…そんなことない、けど』

彼女に褒められたら、やっぱり心が擽ったくなる。

無意識に上げた手が行き場を失ったから

咄嗟に頭に持って行って

ぐしゃぐしゃっと髪を崩した。

もうすぐ家に着く。

嫌だな、次はいつ会えるんだろう。

なんてぼんやり考えていると

少し先に見覚えのある姿。

…………作間くんだ。

「もう着いちゃうね」

『そう…だね』

ぬいぐるみに視線を落としてるからか

Aはまだ気づいてない。

ドクン、と疼く心臓と悪い思考。

きっと作間くんに気付いたらAは声をかけて

じゃあここで、なんてバイバイされるに違いない。

そう考えたら嫌で嫌で。

『ねぇ…』

「ん？なに………っ」

『……………ちょっとだけ』

無意識に彼女に伸びていた腕。

ぬいぐるみごと引き寄せてぎゅっと閉じ込める。

ゆ、優斗？なんて動揺してる彼女の声に

ん？って我ながら上手くとぼけて。

チラリ、と前を見ると作間くんと目が合う。

『…………………好き』

どうしてかは分からない。

だけど。

どうしようもなく作間くんの前で

Aのことを抱きしめたくなった。

「っ…、私も、好き」

『誰が？』

「な…っ、ゆ、優斗に決まってるよ！！」

Aの声に作間くんが一瞬だけこっちを見て

気づいてないかのようにすぐに家に入っていく。

馬鹿みたいなことをしたって分かってる。

けど。

『ふは、ごめん(笑)』

俺のなんだ、って少しでも意地を張らないと

きっと作間くんは簡単に彼女を

奪い去ってく気がして嫌だった。

『A』

「ん？」

『目閉じて』

今日、俺以外のこと考えちゃダメだよ。

そんな言葉とワガママを

重ねた唇に溶かした。

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