恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ17)

今日:19 hit、昨日:10 hit、合計:217,408 hit

・ページ17

.

Side of You

『私服見るの久しぶり…………だね』

「ほんとだね、偶然会った時以来？」

行こっか、と言われて2人で並んで歩くけど

なんだか会話がぎこちない。

どうしようって話題を思い浮かべては消してを

繰り返してはもどかしくなった。

『A』

「へ…っ」

ぐいっ、といきなり引かれた腕。

勢い余って肩と肩がぶつかる。

もう少しで人にぶつかりそうだったのを

優斗くんが気づいて引き寄せてくれたみたい。

ごめん、って言葉は出せたものの

その力強さといきなり近づいた距離に

心臓はうるさくなる一方。

優斗くんも優斗くんで、すぐに掴んでた手を離して

私から目を逸らしてしまう。

『今日はさ、…Aが好きそうなとこ探したから』

「ほんと？どんなとこ？楽しみ！！」

『ふは、じゃあ早く行こ………っご、ごめん』

「う、ううん……」

優斗くんがいつもの笑顔でそう言うから

ちょっとほっとして私もいつもの調子になれる。

それを見て優斗くんの表情もぱあっと明るくなって

連れていこうという気持ちを強くしてくれたのか

私の手を取ろうと指先が当たった。

すると、ハッとして手を引っ込めて

唇をきゅっと噛んじゃうから。

「優斗、……」

『っ、ん？』

恥ずかしくて電話越しでは

つい出せなかった呼び捨て。

1歩分先を歩く彼が振り向いて小さく首を傾げる。

ん？って言う声が優しすぎて

それにもきゅうっと胸が苦しくなるけど。

「手………、繋いで、ください…」

『っ…、駄目だね、俺』

恐る恐る差し出した手を

優斗は掬いとってぎゅっと力を込める。

『Aから言ってもらうとかマジでダサい』

「そ、そんなことないよ」

『でも、良かった………』

私の顔を覗き込んで

『俺 " も " ずーっと、繋ぎたかった』

なんて言うから、熱くなる顔。

ゆらゆら控えめに繋いだ手を揺らしながら

優斗が案内する方に歩いていく。

目が合った時に、お互い照れ笑いして

びっくりするくらい甘酸っぱい。

「優斗くん前髪崩れてる」

『え゛』

「ふふ、嘘だよ(笑)」

『な、…っマジで焦ったじゃん！！』

仕返し、ってぎゅーっと繋いだ手を強く握られて

痛い痛いと私が思わず連呼すると

ごめんって言うくせに笑ってる。

なんとなく、なんとなくだけど

これが私と優斗らしい雰囲気なのかななんて

ふわっと思ってみた。

.