恋じゃ君を掴めない。 Ⅱ (ページ11)

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Side of Ryuto

『今日、アイツと帰ったんでしょ？』

「え、？」

『たまたま教室通りかかったら聞こえたから』

「っ……やっぱり声大きかったよね」

『よかったじゃん』

思ってないことを口にするのって

考えてるよりも苦しい。

一応笑ってるつもりだけど引きつってないかな。

タイミング良くスーパーに着いて

しょうゆだけだったからあっさり買い物は終了。

コンビニに行って彼女の分までアイスを買った。

「え、私の分もいいの？」

『うん、涼のお金だし』

「後で怒られる…(笑)」

『大丈夫だよ(笑)』

「あ、さすがさくちゃん。私の好きなやつ」

『昔からそれしか食べないから分かるよ』

「だって1番美味しいんだもん」

ひとつお気に入りを決めちゃえば

いつもそれしか食べないのが彼女だった。

好きなチョコレートの甘さも

ミルクティーよりレモンティーなのも

全部全部知ってる。

でも、……全部俺だけが知る訳じゃなくなる。

アイツがきっと、……俺よりも知り始める。

「男の人ってどんな服が好きなのかな」

『………なんで？』

「デート、服とかどうしようかなって」

『デート………ね』

ズルい。

「こんなの、恥ずかしくて

さくちゃんにしか聞けないから…」

ズルい。

『……………Aの好きな服でいいんだよ』

彼女は俺を結局離さない。

「いつも通りってこと……？」

『うん。結局好きな服が1番似合うんだから』

「そっか………ありがとう、さくちゃん」

『ううん、…………晴れるといいね、デートの日』

「ふふ、うん！！」

ちゃんと、ただの幼馴染やれてるかな？

どんどんそういう振りだけ、上手くなりそう。

" ふふ、せっかくさくちゃんと出かけるんだもん。

隣を歩く時恥ずかしく無いようにしなきゃ "

そうやって、これまでは俺のことを考えて

服もメイクも髪の毛も頑張ってくれてたのに。

途端に過ぎる切なさ。

ねぇ、俺じゃダメなの？

あとは何が足りないの？

「じゃあ、またね」

『うん、また』

家に着いて、玄関に入る彼女の背中を見送る。

こんなにAって俺にとって遠かったっけ。

ぽつ、と道にひとつシミが出来る。

空を見上げると分厚い雲が掛かってて

どくん、と脈打つ心臓。

ほんとについてない。

雨は嫌いだ。" あの日 " を思い出すから。

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