枯渇と残夢【HUNTER×HUNTER】

34*Easy ページ37

速い。

その一言だ。

ゴンの瞬発力、敏捷性も常人以上だけど……。


技術は彼の方が上だ。



「……A♣」

「何」

「どう見る?♦」

「……ゴンは折れない。それは確証がある。
　で、ハンゾーとかいう人はゴンより技術が上だけど、苦戦すると思うよ」

「是非、ボクにも見せて欲しいな……それ♠」



ヒソカは卓越者の拡大鏡(シュピーゲル オブ ブリジット)を指差してそう言う。

わざわざ隠で隠したの凝で見なくてもいいのに。



「今度機会があればね。今日は嫌だ」

「じゃあ、楽しみにしておくよ♥」

「気が向いたらの話だから」



……面白くない。

ただ勝とうとするだけの戦いなんて楽しくない。

普通の人なら、勝つだけが目的なんだろうけど。



うん……拷問耐性は無し、てことは普通の子に違いない。

ハンゾーは容赦無くゴンをいたぶる。

耐性が無くても、彼は耐え抜く。

折れない。

今まで見てきて、そう思った。

芯が強くて、意志が真っ直ぐで素直。

真っ当な男の子だ。


試験が始まって3時間。

未だにゴンは音を上げない。

そして、ハンゾーの一方的な攻め……。



「見るに耐えない……」

「そうだろ、Aもそう思うだろ!?」

「多分、レオリオと考えてること違う……」

「は?」

「つまらない」

「お前っ……」



レオリオは私の襟元を掴み上げ、揺さ振る。



「恐らく、否、私とレオリオの頭の構造は違うもの。私は違う視点から見てる。
　その視点から見ると、これはつまらない」

「!?」

「怒らせたのなら、それはごめん。謝る。口閉じとく」

「……すまねえ」



あぁ、発言に気を付けなきゃ。

私の感覚で物事を捉えてはいけない。

歪んでるのだから。



「骨を折る」

「!?」



まさか。


その時、嫌な鈍い音を立ててゴンの腕は折れた。



「……本気で折った」



クラピカとレオリオは憤りを露にしている。

……今手を出しても、ゴンは絶対に喜ばない。

見守ることが、第一だ。



「痛みどころでそれどころじゃ――――」



“シノビ”。

あぁ、ジャポンの……。

12で人殺しなんて自慢でも何でもない。

ルーン族の規律を破った同胞を処刑するのは私の仕事。

5歳頃には手を血で染めていた。



「ふっ」

「あっ」



ゴンがハンゾーを蹴り飛ばした。


やっぱり、彼はある意味強い。



(同胞を殺しただと!?)
(そういう規律があるの! 私が殺らないと私が御父様に殺されるの!!)
(有り得ん……)

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