【ky】君のヒーローになりたくて【T.O.P.4】

34.お目当てのもの ページ36

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キヨさんは「いってェ〜…」とボヤきながら身体を起こした

横に倒れ込んでいる感染者はもう起き上がる様子はない



『キヨさん無理しないでください！大丈夫ですか！？』



彼に駆け寄ってみると、腕や額には傷が多数ついていた

痛々しく血が垂れている

そして…肩には噛まれた跡のようなものがあった


「…噛まれちゃった」



キヨさんはへへ、と笑った



『…っそうだ！私が渡しておいたお薬、キヨさん持ってますか？』


「レトさんにあげちゃった…俺は絶対大丈夫だから、って」


『こんな時に…』



庭園にはもうグリーンハーブはない

今更どうしようもなかった。



『キヨさん…っ、少し待っててください、絶対ワクチン見つけますから！』

「…Aさん、そんなのいいから……ここに居て。探しに行く方が危ないよ…」



私はしゃがんでキヨさんと目線を合わせる

すると、ずっと黙っていた牛沢さんが声をあげた



「これ…ワクチンじゃねぇか？」



部屋の奥の机に向かって、確かに彼はそう言った

牛沢さんは駆け足でこちらへ来ると、手の中の物を私達にみせてくれた


そこにあったのは紫の液体が入った注射器と1枚の紙。

紙には［成功型ワクチン タイプ1］と書かれている



『ワクチン…だ！キヨさん、これを打てば…！』


「マジ、で？……いいの？俺が使っちゃって…」


『勿論！キヨさんが使うべきです、このワクチンは！』


「……ありがと」



キヨさんのシャツの腕を捲り、注射を打とうとしたその時

1階の方で叫び声と銃声が聞こえた



『…！？レトくんの声…！！』


「行って、俺はいいから」



キヨさんが私をドアの方に押す



『で、でも！キヨさん1人になっちゃう！』


「そんな簡単に俺は死なねぇよ…！信じるんだろ！？行ってくれ！」


牛「…行くぞ、A」



牛沢さんも私の腕を引いて部屋から出ようとする

そして、小さな声で囁いた



牛「キヨも良いとこ見せてぇんだよ、きっと」


「ほら、早く…幼馴染が叫んでんだから、行ってやれ…！」


『っ、死ぬなんて、許さないですから！』


「はは、当たり前だ」



私は注射器をキヨさんに投げ渡した

ありがとう、と言って微笑む彼に背を向け、部屋を出る


走って階段をおり、1番最初に居たホールへ行くと……



床に座りこむレトくんと、息を切らすガッチさんがいた



『大丈夫！？』

「…ひっ！？」



レトくんは、私を見るなり驚いた声をあげると銃をこちらに構えた

あの時の牛沢さんのように。


『どう、して…』



ふと俯くガッチさんの目線の先を見ると

まるで私のような見た目をした感染者が血を流し倒れていた

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