【rtrt】 誘拐犯と私 2【実況者】

逃亡63日目 ページ15

『失礼します…』





扉を開け、法廷に入る







中はドラマや映画で見たあの様子そのものだった






裁判長椅子の横に座る裁判官や、私たち証言人の正面に経つ検察官






まだレトルトさんはいないようだ






『あ…』





ふと、横を見ると視界に入ったのは






『P-P…さん…』





P-Pさんは、驚いたような顔をしてこちらを向いた




彼の頬には少しの傷があった




『…あの』




静かに、と言うようにP-Pさんは人差し指を口元に当てる






私は黙って俯いて座る





いくら彼に会うのが楽しみといえど、当の本人がいないこの場は居心地がとても悪い






そのとき





コンコンッ





と横の扉がなった







「入りなさい」







という低い男の声が聞こえる







私はどきどきとしながらその方向を向く








最初に目に入ったのは警察官







次に目に入ったのは









『レトルトさんっっ…！！！』









レト「A、ちゃん──」








約1週間ぶりにあった




私がずっと求めていた





彼の姿だった





警察官「私語は慎め」





警察官はレトルトさんに向かって言う





レトルトさんは私からスっと目を逸らし、被告人の証言台に立った






その後すぐに裁判長らしき人が入ってきて、前中央の椅子に座った






そして、あちら側の人間が一礼をした







裁判官「これより、香坂怜斗の裁判を開始します





東京都✕✕区在住、1991年12月26日、無職、香坂怜斗…でいいですね？」






レトルトさんは頷いた






場は裁判官の喋る音しかしない







レトルトさんは、無職なんかじゃない







ゲーム実況者っていう、人を笑顔に、幸せに出来る素敵なお仕事をしているのに。







裁判官「被告人は2ヶ月前である✕月✕日にAさんの高校前の河川敷で彼女を誘拐したことである」







そこまで、バレてるんだ…







私は静かにその言葉を聞いた






裁判官「間違いありませんね？」






レト「…はい」








『レトルトさん…』







母「静かにしなさい」








母は私をとめた


「余計な事は言うな」とでも言うふうに。





検察官「被告人は、被害者が河川敷で休んでいたところを口説いて誘拐したと思われます」





検察官「証拠ですが…被害者の額に入っていた傷です。これは誘拐中か前か分かりませんが、周りからの証言で被告人に誘拐される前は付いていなかった、との事なので、被告人が何らかの暴行をしたと思います」



何もかもが、違った

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