◆Episode II:デザートは桃ゼリー ページ10
4月も下旬に差し掛かりつつある今日。此処、鳳凰学園は未だ数多の出逢いに色めき立っていた。
春は出逢いと別れの季節。その言葉通り、春を迎えると人々は新しい世界へ旅立つ為に別れ、出逢いを繰り返すのだ。一期一会、人は様々な経験を経て成長していくのです。
かく言う私も、ゼロ先輩と言う一本槍に貫かれ、この春は困惑したものです。
「茜屋さん、お行儀悪いよ」
「ですが、ゼロ先輩。今この瞬間を逃してしまったら、私は後悔してしまいます!」
「……」
今日も新たな出逢いに浮かれた学園の食堂の片隅、昼食として用意された美味しそうな和風定食と美人だと思われるゼロ先輩そっちのけで、私は望遠鏡を覗いていた。方角は窓の外──外は桜の樹と躑躅の茂み、その奥には中庭が続いている──、覗いたところで対して面白い物が移る訳では無いのだが、この望遠鏡は只の望遠鏡では無い。
“
元は地獄の神が現世を監視する為に使われた一枚の大鏡で、その一部から作られた物と言う説が有力らしい。 現存している望遠鏡の数は手元にあるこの望遠鏡を含めて三点のみ。それぞれ大死神に認められた三家に預けられ、厳重に保管されている。
しかし、その一つがあろうかとか死神見習いの私の手元にある。これには色々事情があって言いたくはないのだが……察しの通り、私が持ち出したのだ。
私の実家である茜屋家は死神界でも名門一族である。故に、この望遠鏡が預けられていたのだろう。
しかし、幼少期の私は飛んだじゃじゃ馬だったらしく、父の部屋にあった望遠鏡を勝手に持ち出してしまった様だ。誠に残念ながら、その時の記憶がないので確証は出来ない。
(もしかしたら“盗み出した”と言う表現の方が正しいなんて事も……)
つまり、私は軽犯罪を犯していた可能性があるのだ。あくまで可能性の話なので、真相は分からないけど。
でも、私はこの望遠鏡を非常に気に入っている。レトロなフォルムもさる事ながら、何より“現世が見られる”と言う所に魅力を感じるからだ。
そして、更に良い点を挙げるとするなら、“特定の人物の追跡”も可能であると言う事だろうか。
「今日は鯖の味噌煮なんですね。私もなんですよ〜」
「ご飯冷めちゃうよ」
向かいの席に座るゼロ先輩のお母さん発言も気にならない程に、私は鏡越しの景色に熱中していた。
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十二月三十一日(プロフ) - すふ丸【低浮上】さん» ご閲覧有難う御座います。そう言って頂けると光栄です。とても励みになります。内容が内容なだけにスローペースでの更新となりますが、今後とも応援宜しくお願いします。 (2018年6月8日 22時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸【低浮上】(プロフ) - 突然のコメント失礼します。試験勉強の合間に読み返したくなるくらいお話が好きです(^o^)撫子さんとゼロさんの今後が凄く気になります！更新楽しみにしております、頑張って下さい！ (2018年6月8日 21時) (レス) id: 5ecb48edcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年5月8日 23時
