検索窓
今日:14 hit、昨日:3 hit、合計:4,511 hit

├ * ページ43

オマケに容姿も若々しくて、簪さんと同い年だと言って通ってしまいそうである。彼とも10年以上の付き合いになるのだが、不思議な事に彼の姿は出会った当初からずっと変わらないのだ。
 そんな彼が胸に手を添え、45度の正確なお辞儀をするのはとても絵になるが、同時に巨体の上体が前に傾く為、何かされるのでは無いかと内心ヒヤリと凍り付かせる。

「お久しぶりです、ウノ様、ゼロ様」
「えぇ、本当に……マリアさんも元気そうで何よりです」
「阿知葉家に仕えている者として、常に健康体である事は当然でございます。此方もお二人に変わり無くて、大変嬉しゅうございます」

 彼はそう言って、笑みを浮かべた。どんなに穏やかな笑顔でも、2メートル越えの迫力は止まる事を知らないらしい。



 挨拶も程々に、暫く簪さんとマリアさんで会話に花を咲かせていると、突如酷いハウリングが大広間全体に鳴り響いた。その異常な音量に、あんなに賑わっていた会場はしんと静まり返る。
 音の主はたった一本のマイク。広間の上座、オーケストラ一同がズラリと並ぶその隣で、ポツリと寂しげに佇むスタンドの前に立つ男が戸惑った様子でマイクの交換を促した。男が動く度にマイクが布擦れの音を拾い上げ、不快な怪音波を放っている。電源を切れば良いものを、男の慌てっぷりを見るとそれどころでは無いらしい。

「あの人がグラナート・ヤヌアール……」
「なんか、普通と言うか……」
「彼はああ見えて、天使界トップを競う実力者ですよ。自信の無さが欠点とも言えますが、それを抜きにしても侮る事は出来ません」

 簪さんの説明を受けた後、再びグラナートさんに目を向けるが、彼は相変わらず慌てた様子で周囲に助けを求めていた。本当に天使界トップを競う実力者なのだろうか、後二年で俺達兄弟も飛び込むであろう天使界に少し不安を抱く。
(そっか、後二年か……)
 今思えば、俺達があの学園に居られるのも残り二年と短くなっていた。入学当初は五年は長いなぁと思っていたのに、時が過ぎるのは本当にあっという間で、いつの間にか親から離れられる猶予も無くなっていた。楽しい時間であればある程、容赦無く早く通り過ぎて行く。家を出たくて絢爛学園に入学したのに、薄情で無慈悲な時の流れはいつも俺を現実から引き戻す。
 そう言えば、あの子──茜屋さんはまだ四年在学する予定だったか。俺が卒業すれば、必然的に彼女とは二年間会えなくなる。

├ *→←├ *



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 6.4/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:鳳凰の如く。 , 派生作品 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

十二月三十一日(プロフ) - すふ丸【低浮上】さん» ご閲覧有難う御座います。そう言って頂けると光栄です。とても励みになります。内容が内容なだけにスローペースでの更新となりますが、今後とも応援宜しくお願いします。 (2018年6月8日 22時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸【低浮上】(プロフ) - 突然のコメント失礼します。試験勉強の合間に読み返したくなるくらいお話が好きです(^o^)撫子さんとゼロさんの今後が凄く気になります!更新楽しみにしております、頑張って下さい! (2018年6月8日 21時) (レス) id: 5ecb48edcc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年5月8日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。