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だが、俺は今、二人の会話に参加出来ずに居た──否、出来る状況になかった。開いた口が塞がらないとは正にこの事なんだと、脳裏で漠然と思えてしまう程目の前の光景が衝撃的過ぎて、話の内容が頭に入らないのだ。
衝撃的光景の正体は、言わずもがな簪さんである。そんな彼の背格好は、学園に居る時と全く異なる物だった。
普段はガサツさが垣間見える銀髪は軽くセットされていて、魔法使いの様な不気味さを醸し出していた姿勢と和装から一変、スラリと美しい姿勢にグレーのダブルスーツへと変貌を遂げていた。“正真正銘の化け物”と恐れられた簪さんは、今や新社会人宜しくと言わんばかりの爽やかな好青年である。
唯一の簪さん要素は、ネクタイ代わりにダブルスタンドのシャツの襟に巻き付いていているいつもの髪飾りと、瞼が重く生気を感じられないヘーゼルの瞳ぐらいか。9割方他人で、一瞬誰だか分からない程だった。いつもの猫背から背筋がピンと伸びているので、気持ち2、3センチ程身長が高くなっている様にも見える。貴方は本当に魔法使いか。
それを察してか、簪さんは人を食った様な笑みを浮かべ、「貴方は変わりない様ですね」と皮肉を言った。
「だっ…………いや、でも……」
「何を言われるか粗方想像が付きますが、知らないフリをして聞きましょう。どうぞ、ご感想を」
「……普段と全然違ったから、もしかして人違いなのではと思いました」
「よく言われます」
テンプレートみたいなやり取りでつまらないと言った様子で、彼は肩を竦めた。本当によく言われているのだろう。
慣れた会話だからこそ、新しい答えを欲しかったのかもしれない。しかし、生憎今の俺にはそこまでの語彙力は無いし、それ以外の感想が見当たらなかった。彼の欲しい回答は、いつも難易度が高くて困る。
折角だからと、簪さんは今の姿について話してくれた。
彼は普段ビックリするぐらい姿勢が悪いが、実は態と悪くしているのだと言う。事実、猫背である事は確かなのだが、学園に居る時程酷くないらしい。
では、何故そんなに姿勢を悪くしているのかと問えば、「やるなと言われた事は、積極的にやってみたくなるものでしょう? だから、やってるんです」と倫理観の無い彼らしい答えが返ってきた。
気持ちは分からなくも無い。例によって、「押すなよ! 絶対押すなよ!」の法則である。やるなと言われた事は、自然とやってみたいと言う心理が働くものだ。
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十二月三十一日(プロフ) - すふ丸【低浮上】さん» ご閲覧有難う御座います。そう言って頂けると光栄です。とても励みになります。内容が内容なだけにスローペースでの更新となりますが、今後とも応援宜しくお願いします。 (2018年6月8日 22時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸【低浮上】(プロフ) - 突然のコメント失礼します。試験勉強の合間に読み返したくなるくらいお話が好きです(^o^)撫子さんとゼロさんの今後が凄く気になります！更新楽しみにしております、頑張って下さい！ (2018年6月8日 21時) (レス) id: 5ecb48edcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年5月8日 23時
