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(困ったなぁ。こう言うの一番苦手なんだけどな……)
こうして見ると、ゼロ先輩はどうやら自分のスペックの良さに気付いてない様だった。鈍感、それもかなり重度の。
私は先輩の本心に触れてしまった事があるが、彼はこうして私と仲良く接しても尚、自分の気持ちに全く気付かずに過ごしている。私にとっては有難い事ではあるけど、それにしたって鈍感過ぎると思う。寧ろ大声で叫んで伝えたい所だが、それをやったら元も子もないのでやるつもりはない。
しかし、ずっとこの調子なのは流石に困る。私への気持ちに気付かず、尚且つ自分のスペックを自覚させるには……って、無理難題過ぎるにも程があるだろう。
一層の事、皆に見て貰えば良いのに。皆に、見て貰えば──
「あ」
「どうしたの?」
良い事を思い付いてしまった。これは我ながら良いアイデアだと思う。
私はベンチから立ち上がると、ゼロ先輩の前で自信満々に仁王立ちする。先輩はコテンと首を横に傾げながら、私を見上げた。うむ、高身長の先輩を見下げるこのアングルは中々新鮮だ。
「なら先輩、此処で私と踊りましょう」
「……えっと?」
「私と踊りましょう」
「あ、嗚呼……踊るのね、踊る……え!? 茜屋さんと一緒に!?」
見えないけど、きっとこの布の下には面白い顔をしたゼロ先輩が居る筈だ。見てみたい衝動をグッと堪え、彼の手を取って引っ張る。
「ま、待って! どうして俺が茜屋さんと踊る事になったんだ!?」
「荒療治ですよ。大丈夫、恥を掻くのは先輩だけじゃないです」
「そもそも君は平気なんだろ! これじゃ、俺だけ損する事になるじゃないか!」
「それがどうした!」
「どうかするんだよ!」
強引にゼロ先輩をベンチから引き剥がし、中庭のど真ん中、円形に開けた場所に連れて来た。
色取り取りの花々が広場を取り囲み、石畳は大理石とまで行かないとは言え、とてもなだらか美しい模様を描いている。此処に蝶でも飛んでいたら幻想的なのだが、生憎この鳥籠の中には動物は侵入出来ないので、非常に残念だ。
この即席で作られた舞台で、私はスカートを翻しながらくるりと一回転する。
「では、行きましょう」
「いやいや、無理だって。それに音楽も無いのにどうやって踊るの?」
しまった、そこまで考えてなかったと思った瞬間、何処からかピアノの音が鳴り響く。音源が所々ガサついているので、これが学園のスピーカーから流れている事が分かった。
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十二月三十一日(プロフ) - すふ丸【低浮上】さん» ご閲覧有難う御座います。そう言って頂けると光栄です。とても励みになります。内容が内容なだけにスローペースでの更新となりますが、今後とも応援宜しくお願いします。 (2018年6月8日 22時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸【低浮上】(プロフ) - 突然のコメント失礼します。試験勉強の合間に読み返したくなるくらいお話が好きです(^o^)撫子さんとゼロさんの今後が凄く気になります!更新楽しみにしております、頑張って下さい! (2018年6月8日 21時) (レス) id: 5ecb48edcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年5月8日 23時