└ ＊ ページ22
「もう、返事は……」
「勿論、出席すると返しました。こういう時でないと上層部の人間と接触出来ませんから」
やはり目的は情報か。実に簪さんらしい回答ではあったが、俺がこの宴会に参加するかどうかは別の話だ。
それを察しているのか、彼は招待状を懐に仕舞うと、「暇になりましたら、話し相手になって下さいよ」と遠回しに参加を促す。どうせ拒否権はないんだろと言った口振りに少し苛立ったが、あの両親に不服申し立てをした所で拒否権を得る事が出来なさそうなので、諦めて「分かりました」と返答をした。
「ダンスの練習とでも思っておけば良いんですよ。プロムでは結構役に立ちますよ」
「プロムは任意参加でしょ。って言うか、簪さん相手居るの？」
「今は居ませんよ。学園生活最後なので参加したい所ではありますが、相手探しが面倒でしてね」
じゃあ、駄目じゃんと呟けば、簪さんはそれはそれは愉快そうに笑っていた。
彼がプロムだなんて、全く想像付かない。そもそもダンスをしている姿が思い浮かばないのだ。普段から彼を見ているが、姿勢は悪いし足癖も酷い。少しマナーに欠ける印象があるので、公衆面前で姿勢良くマナー良くしているイメージが全く想像出来ないのは当然である。
となると、簪さんの貴重な姿を見る事が出来るのではと思ったが、それではまんまと彼や両親の罠に引っ掛かってしまいそうなので、頑なに行きたくないと脳内に思い込ませておいた。そうだ、俺は宴会なんて行きたくないんだ。
スピーカーから昼休み終了の知らせが流れ出し、我に帰った俺は慌てて本を仕舞う。簪さんはちゃっかり自分の持ち場に戻って作業を再開させていた。この人は本当、興味が失せると途端にドライになるな……。
＊
返却された全ての本を元の場所に戻し終え、簪さんと共に図書室を出る。埃っぽい匂いが薄まり、外の喧騒が聞こえると、今まで俺は別の世界に居たのではないかと錯覚しそうになる。勿論そんな事は無いが、図書室はどの学校でも特別な場所に思えてくる。
「では、僕はこれで」
「はい、今日はありがとうございました」
一言お礼を言って踵を返すと、簪さんに「あの」と呼び止められる。まだ残っている作業でもあるのかと振り返れば、彼は神妙な面持ちでこう言った。
「気を付けて下さいね」
それだけを言い残し、死神課校舎は向かって行ってしまった。
(……何だったんだ、今の)
その言葉の真意は、その瞬間が来るまで俺には分からなかった。
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十二月三十一日(プロフ) - すふ丸【低浮上】さん» ご閲覧有難う御座います。そう言って頂けると光栄です。とても励みになります。内容が内容なだけにスローペースでの更新となりますが、今後とも応援宜しくお願いします。 (2018年6月8日 22時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸【低浮上】(プロフ) - 突然のコメント失礼します。試験勉強の合間に読み返したくなるくらいお話が好きです(^o^)撫子さんとゼロさんの今後が凄く気になります！更新楽しみにしております、頑張って下さい！ (2018年6月8日 21時) (レス) id: 5ecb48edcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年5月8日 23時
