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呆れて物も言えない。その優しさは、先輩にとっても誰かにとっても損する事になる。現に学生にとって貴重な昼休みを丸々棒に振りそうになってるじゃないか。この人はお人好しを通り越して馬鹿なんじゃないかとさえ思えてくる。
軽く溜息を吐きながら箸を手に取ると、「ねぇ、知ってる?」と先輩も同じく箸を持ちながら話を進める。
「一人で取る食事を孤食って言うだけど……その孤食てさ、実は色んな病気を引き起こす要因にもなってるんだよ」
「病気ですか?」
「うん。栄養バランスの面からもそうなんだけど、主に心の病気になりやすいんだって。例えば、会食恐怖症。不特定多数の人間との食事が苦手になるらしい。酷いと外食もままならない」
「そんな恐怖症もあるんですね」
頂きますと一言挨拶を置き、鯖の味噌煮に箸を入れる。身は柔らかくてふわふわしていた。
ゼロ先輩は顔を隠す白い布を器用に避けながら、一口分の白米を口に運んだ。非常に食べにくそうである。
「俺も会食が苦手になるなんて変だなと思ってたんだけど、近年はこれが深刻化しているんだよ。コミュニケーションを取らなくなったら、俺達は一体誰と会話すれば良いんだろうね」
「インターネットとかですかね?」
「ネットの世界は嘘の世界だから、のめり込まない方が良い。身体にも心にも悪いよ」
ほうれん草のお浸しを口に入れる。炒りごまの風味が甘しょっぱいタレの味とよく合っている。
「それに孤食はアルコール依存症や鬱になり易いんだよ。寂しい食事の捌け口が酒に行ったり、逆に吐き出さなくなったりしてね。だから、孤食が習慣付いている人の死亡リスクは、家族と食事をしている人に比べて1.5倍も高くなるらしいんだ」
「それはヤバいですね。私、まだ死にたくありません」
「なら、誰かと一緒に居る時はちゃんと一緒に食事を取ってね。俺は待ってたから良いけど、他の人は待ってくれないよ」
食事の途中で、箸を置いた。その様子に気付いて、ゼロ先輩もすぐに箸を止める。「どうしたの?」の言葉も待たず、私は口を開いた。
「私、友達少ないから……学校でも一人でご飯食べる事多いんです。だから、誰かと一緒に食べる事は不可能なんですよ」
「……」
折角の先輩の良心を踏み躙ってしまって申し訳ないが、私には誰かと食事をする習慣がまるで無かった。
孤児院では、集団に馴染めなかった私を思って、食事の時間を態とずらしてもらっていた。静かに食事が出来るのは、心底楽だった気がする。
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十二月三十一日(プロフ) - すふ丸【低浮上】さん» ご閲覧有難う御座います。そう言って頂けると光栄です。とても励みになります。内容が内容なだけにスローペースでの更新となりますが、今後とも応援宜しくお願いします。 (2018年6月8日 22時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸【低浮上】(プロフ) - 突然のコメント失礼します。試験勉強の合間に読み返したくなるくらいお話が好きです(^o^)撫子さんとゼロさんの今後が凄く気になります！更新楽しみにしております、頑張って下さい！ (2018年6月8日 21時) (レス) id: 5ecb48edcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年5月8日 23時
