先生へ -YG-

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3月9日から数週間過ぎ、春休みに差し掛かった頃
ポストに彼からの手紙が届いた。


Aさん

誕生日のプレゼントをありがとう。
ずっと大切に使います。
春休みが近いですね、二年生になると勉強も大変になるかと思いますが 無理せず。
僕は 来月から公立高校の教員になることが決まりました。

ミンユンギ


あの白いボールペンを胸に差し、黒板の前に立つ彼を思い描いてふくふくと膨らむ心が 恋心だと気付くのにそう時間はかからなかった。
彼のいる高校に行きたい。子供の浅はかな考えは留まることを知らない。
どこの高校へ配属になったのかを次の手紙で聞き、返事が来る前から私は勉強に精を出しはじめた。
あの日以来、手紙のやり取りでしか彼との交流がなかった事もあり もしかしたら直接会えばこの気持ちが勘違いであることに気がつくかもしれない。
でもそんな空想上の話より 生まれて初めて感じるこの恋心を大切にしたかった。

高校の名前を教えてくれた彼には そこを目指すことは内緒にした。
そんな恥ずかしい事が出来るほど 私は肝が座っていなかった。


仕事の合間を縫って、尚月に1.2度手紙を送ってくれる彼への気持ちは募るばかりだった。

中学二年になった私の誕生日には、彼から薄い水色の小さな月の刺繍が施されたハンカチが贈られてきた。
それを制服のポケットに忍ばせた日は 彼が近くにいるように思えて一日中心が踊った。
彼の言うとおり、勉強はどんどん難しくなり挫けそうになる時にはそのハンカチを胸に抱き締め励んだ。


学校の帰り道、彼のアパートの前を通る時はなるべく早足で通り過ぎる毎日を過ごしていた私は
いつの間にか小児喘息を起こさなくなっていた。


中学三年生になるのを控えた二度目の彼の誕生日には
車のキーにつけられるくらいの 小さな月のモチーフのキーホルダーを贈り、ハンカチに施されているものと同じその三日月をぶら下げた彼の鍵を想像した。


Aさん

今年も誕生日プレゼントをありがとう。
鍵に付けました。とても嬉しいです。
受験勉強が始まっていくと思います。
後悔のないように過ごして下さい。
応援しています。

ミンユンギ


変わらぬ美しい文字が私を奮い立たせる。
高校生になった私が、彼に会える日を夢見ながら
中学三年生になった。

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