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「単位大丈夫そう?」

一限を終えた私と合流し、カフェでコーヒーを飲みながら友人がそう聞く。

「何とか大丈夫そう」

こんな時期にまで授業を取っているのは 自暴自棄になってしまった頃のツケのせいだ。
既に就職活動を始めている友人達も多い中、焦りもありはするが自分のせいであることに納得はいっていた。

少し前にポストに入れた手紙のことを思い返し、
そろそろ集荷されただろうか、ちゃんと届くのだろうか、そして返事は来るのだろうか。
そう考えると、久しく味わっていなかった感覚にわくわくすらした。

彼はどう思うだろう。


「なんか上の空だね」
「ごめんごめん」

拗ねたような顔をする友人と時折冗談を言い合いながら心の底から穏やかな時間を過ごした。
それはなんだかとても久しぶりに思えた。



しかしそれから
待てど暮らせど彼からの返事はなかった。

文通を続けていた頃は1ヶ月に2.3回のやり取りがあったが、既に夏を迎えてしまった今になっても
ポストに白い封筒が届くことは無かった。

住所が変わってしまったのか。
それとも、やはり彼はあの最後の手紙で私にさよならを言ったのだろうか。

どちらにしても、私はもう二度と彼に会えないのかもしれないという事実に押しつぶされそうになるのを何とか堪えながら過ごすのは苦痛そのものだ。

そして夏休みと言えど、ずっと部屋の中で落ち込んでいられるほど大学最後の夏休みは甘くなく
就職活動に汗を流し、涙を流す暇もなかなか取れずにいた。
泣き虫の私は、そのなりを潜めるしかない状況を好ましく思えなかった。





日の長い夏でも、日が暮れるまで大学で調べ物をした帰り道
よたよたと足取り重く歩く私は
帰ったら早々に寝てしまおうとそればかり考えていた。
彼のことを考えてしまうと止まらなくなってしまう。今はそういうわけにはいかない。

ため息混じりの息を吐き、角を曲がると
アパートの前に黒いワゴン車が止まっているのに気がついた。


途端私は一瞬前の思考を全て手放した。


車の横に立つ人影に、
全身の細胞が泡立つ。

右足だか左足だか、出した足がどちらか分からなくなるほど縺れた足元でそこに近づく。

ゆっくりと振り返る人影は
もはや私の妄想なのかもしれないとさえ思えるほど

あの頃と何も変わっていない、彼だった。

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K(プロフ) - ゆんぎそさん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。嬉しいお言葉をありがとうございます、時間が無くなかなか書くことが出来ていませんが励みになります。本当にありがとうございました! (2022年1月28日 11時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんぎそ(プロフ) - 泣きました。もう、久々に感動して泣きました。心が震える素晴らしい作品を読ませていただき、本当にありがとうございました。 (2021年11月30日 1時) (レス) @page27 id: 4741346bef (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - hanakoさん» コメントありがとうございます!言葉の美しさ…本当に嬉しいお言葉をありがとうございます。今私生活が少し忙しくなかなか更新できずいますが、ちゃんと書き切ろうと思っておりますので、またそちらの方もお読みいただけると幸いです。 (2021年11月12日 12時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - 今まで読んだ中で1番言葉で表せない感動と言葉の美しさを感じました泣 本当にいい作品です ありがとうございます泣 (2021年11月11日 2時) (レス) @page27 id: e7d310b575 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - Suzyさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです、本当にありがとうございます。なかなか思うように描き進められなかったのですがそう仰って頂けて書き切ってよかったと思います。 (2021年10月26日 11時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:K | 作成日時:2021年10月10日 8時

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