先生へ -YG-

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拝啓


先生、お元気ですか。

ひと雨ごとに寒さも緩み、次第に春が近付いてくる気配を感じる季節になりました。

私はこの手紙を書きながら、先生に出された宿題に取り組んでいます。
高校三年生の冬 出された宿題がまだ終わりません。

とても難しいのです。
私にはきっと、ずっと解けません。

先生 とても会いたいです。


まだ、夜は寒いです。
どうかご自愛ください。


敬具





濃い茶色の封筒に 折りたたんだ白い便箋を差し込み 糊付けする。
宛名を書き、切手を貼って完成したそれを手に自宅を出る。
春の嵐のように生暖かい風が強く吹いている。巻き上がる枯葉たちは 役目を終えたようにどこかへ飛ばされていく。

大学への道すがら ひっそりと佇む赤いポストに手紙を投函し、風に煽られる長い髪をそっと手で抑えた。


久しぶりに出した手紙は 明日には先生に届くだろうか。
それを真っ白な指で丁寧に開けて読む先生を思い描くと
じんわりと暖かい気持ちになった。

会いたい、とても。

先程自らが書いた宛名を思い出し
いつでも会いに行ける。けれど私はまだ宿題を終わらせられていない。そう頷きポストを後にする。

今日はどんなことをしよう。
この一年で、楽しそうだと思えることはやり尽くしたように気もしたが
なんとか探し出さねば、と歩みを進めた。

授業は一限だけだ。その後は大学で出来た友人を誘って楽しいことをしよう。
楽しいこと‥‥楽しいこと‥‥
携帯で取り留めもない検索をし、スクロールしながら自分がやりたいことを探した。

大学の近くに新しく出来たカフェのページを見つけて
ここにしよう、とスクリーンショットを撮った。
その画像を 宿題 と書かれたフォルダに分けると
私は授業の時間が思いのほか迫っていることに気が付き足を早めた。

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