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水を差し出す友人が、彼だったらどれほど良かっただろう。
中学一年生にタイムスリップして、いちからやり直したとて きっと私はまたここに戻ってくるのだ。
何度繰り返しても、私は変われない。

「あのさ」

友人から受け取った水をごくりと一口飲み込んだ後、掠れた声を出すと、友人は心配そうに私をのぞき込む。

「ん?」

「もしも、どうしても解けない宿題があったとしたら
何年かかっても解けなくて、苦しかったら、」

「うん」

「どうしたらいいと思う?」

んー、と首を傾けながら考える友人に、あまりにも取り留めもない質問を投げてしまった事を後悔した。
しかし、彼女はすぐに私を見据え

「先生に聞くかな」

と明るく笑った。
屈託のないその顔と、奇しくも核心をついた答えに きゅっと心臓が音を立てた。
私が長く出せなかった答えは、私以外にはいとも簡単に出せるのか。

「先生‥‥」

久しぶりに彼をそう呼んだ。
それは苦しいほどにしっくりと喉に馴染んで、当たり前にそうであったかのように胸に居座った。

ユンギさん に手紙を書けないのは
先生 に出された宿題を解けていないからなのかもしれない。

そう思えば思うほど真実味を帯びていく。
友人はゆっくりと立ち上がり、今日は帰ろうか。と微笑んだ。
多くを詮索しない彼女に救われ、私達は街を後にした。

初秋の道をとぼとぼと歩き、
アパートの前でポストを確認する自分は本当に馬鹿だ。
来るはずの無い手紙。
それは自分のせいなのに。

部屋の机の引き出しに溜まりに溜まった手紙を纏めてゴミ箱に捨て、私は新しい便箋に向かった。

先生へ

そう書き出した瞬間
私は大声を上げて泣いた。

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K(プロフ) - ゆんぎそさん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ございません。嬉しいお言葉をありがとうございます、時間が無くなかなか書くことが出来ていませんが励みになります。本当にありがとうございました! (2022年1月28日 11時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんぎそ(プロフ) - 泣きました。もう、久々に感動して泣きました。心が震える素晴らしい作品を読ませていただき、本当にありがとうございました。 (2021年11月30日 1時) (レス) @page27 id: 4741346bef (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - hanakoさん» コメントありがとうございます!言葉の美しさ…本当に嬉しいお言葉をありがとうございます。今私生活が少し忙しくなかなか更新できずいますが、ちゃんと書き切ろうと思っておりますので、またそちらの方もお読みいただけると幸いです。 (2021年11月12日 12時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - 今まで読んだ中で1番言葉で表せない感動と言葉の美しさを感じました泣 本当にいい作品です ありがとうございます泣 (2021年11月11日 2時) (レス) @page27 id: e7d310b575 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - Suzyさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです、本当にありがとうございます。なかなか思うように描き進められなかったのですがそう仰って頂けて書き切ってよかったと思います。 (2021年10月26日 11時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:K | 作成日時:2021年10月10日 8時

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