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『え、いや。私は試食でちょっと食べたから、』
「すげぇ食べたそうな顔してたのに？」
正直めちゃくちゃ食べたい。
チョコレートは大好物だし、このチョコは美味しいやつだし、…でもこれは辰哉にあげたやつだし、
「ん、Aも食べよ」
『でも』
ほら、とチョコを私の目の前に持って来られれば、本能的にそれを目で追ってしまう。
それを見て「猫みたい」と彼は声を上げて笑うけど、でもしょうがないじゃん。
「はい口開けて」
『……食べるなら自分で、』
そう喋ろうと口を開いたところにチョコが押し込まれ、なかに甘みが入ってきた。
……あ、おいしい。
口に広がった程よい甘味と苦味に、とろける。
「おいしーの笑」
『…うん』
「お前まじで甘いもの食べる時幸せーって顔するよな」
『…そう？』
「ん。だから俺、チョコよりそっちの方が食べたくなるんだけど、」
『え？』
突然何言ってんだ、と思ったその瞬間、後頭部に手を回されキスをされた。
ぴったりと重ねられた唇。ロマンチックなムードもなく、ただ唐突に思い出したみたいに重ねられて、
そして程なく有無を言わさず入り込んできた舌からはさっき彼が食べていたラズベリーの入ったチョコの味がする。
『…っ、まって、』
「やだ」
『まだチョコ残って、』
「あれは明日また一緒に食べよ」
…こうなってしまったら、もう終わりだ。
チョコよりも甘ったるい視線を目を細めて私に向ける彼に、こうして捕まったら終わりだ。
『っ、でも、溶けちゃ』
「んー、だいじょうぶでしょ」
なんとなく、今日もまたこうなる気はしていたけど。
いや気がしていたというより、もしかしたら自分から期待してたのかもしれない。
だとしたら私はもう、相当彼に染まってしまっているんだろう。
……甘いのは好きだから、まあ、いいか。
「A、甘いね。チョコより甘い」
『っ、ぁ、…ほんと、…ゆるして、』
「ふは、なにそれ。かわいすぎんだけど、」
付き合って初めてのバレンタインの夜は、そうしてチョコよりも甘いその人に溶かされながら。
ゆっくりと更けていった。
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ryuryu0528(プロフ) - 何回も読ませて頂きました。ぜひTwitterの方も読みたいです。 (12月31日 0時) (
レス) @page20 id: c47e3b9cc4 (このIDを非表示/違反報告)
kmgapsy03(プロフ) - 何回も読ませていただいてます！まだまだ物語終わってほしくないです！続き楽しみにしてます♡ (2022年3月2日 1時) (レス) @page20 id: 70d4c7f329 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - ぽきさん» ありがとうございます…！ずっとゆるい感じが続いているので大丈夫かな？と思っていたので、そのように言っていただけて安心しました…！そんなに読んでいただけているなんて、！本当に嬉しい限りです！これからもよろしくお願いします…！ (2021年2月16日 23時) (レス) id: 75c0547d0d (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - yikumiさん» コメントありがとうございます…！私の書きたかった空気感を汲み取っていただけているようですごく嬉しいです…！お読みくださりありがとうございます！今後もよろしくお願いします…！ (2021年2月16日 23時) (レス) id: 75c0547d0d (このIDを非表示/違反報告)
ぽき - このお話大好きです！！！主人公の女の子とふっかの世界がめちゃめちゃ好きです！！！だから、ダラダラな長い話になってでもずっと読んでいたいって、個人的に思ってます。今公開されてるやつだけでも、5回は読みました！それくらい好きです！！！ (2021年2月15日 22時) (レス) id: 15956853ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こゆき
| 作成日時：2020年11月4日 10時
